ロボによる531セル

326 ◆AC57OO8nhs [sage] Date:2009/01/06(火) 18:46:28.95 ID:eEaRcoDO Be:
どらめも531セル把握。


あまり柔らかくないソファが2つと、それに挟まれるように置かれたテーブルには淡い水色のクロス

カーテンで区切られて壁沿いに置かれた三台の白いベッドに掛けられたシーツには皺一つ無くて

少しばかり消毒薬の匂いがする、居心地の良い白を基調としたその空間には
私とその人しかいない

「531、また朝礼中に倒れてしまったね?」

「はい…」

「たしか先週の朝礼中にも君は倒れたね」

「はい…」

「そのまた先週も確か…」

「はい…」

大好きなセル先生と話をしているはずなのに
私の声は加湿器のモーター音にさえ負けてしまいそうなほど縮こまってゆく

だって、申し訳ない

学園長先生の話が長いわけでもないし、校歌がフルコーラスなわけでもないのに
私はここ数ヶ月間、無事に朝礼を終えた記憶がない
いつだって途中で貧血を起こして目眩や動悸でふらふらと倒れてしまう

「…まぁ、身体の問題だから仕方がないことだがね」

「すみません…」



「ふふ、別に謝らなくてもいいさ」

セル先生は一つ軽く笑いながら、テーブルに広げられた保健室利用者記録に手慣れた調子で私の名を記した

ちらりとのぞき込んだそのB線の白いノートには、保健室を使った人の名前と日時と使用理由が書き残されている
その中の5行に一つは私の名前があって
多い所では三行連続で私の名前があったりする

それはすごく申し訳ない事のはずなのに
なぜだかほんの少し嬉しくなってしまう私は、きっと駄目な生徒なんだと思う
セル先生は、あくまで仕事をしているだけなのに…

「…」

「…」

会話はなくて
私は、私の名を書き終えた黒いペンがセル先生の綺麗な指先でくるくると回るのを
ただぼんやりと眺めていた

すらりとした綺麗な手…

私が倒れる度に、この綺麗な手に、大好きなセル先生に
迷惑をかけてしまっているんだ…

そう思うと、やっぱり申し訳なくなる


「…健康に、なりたいなぁ」

「健康になりたいのかい」

「え?」

胸の片隅で思っただけのつもりだったのに、どうもそれは口に出ていたらしくって
私は慌てて口を手のひらで塞いだ

「どうしたね?531」

「い、いえ!なんでも…」

「変な531だね」

確かに健康にはなりたいけど
健康になったらきっと私とセル先生は何の関係もなくなってしまう
あの綺麗な手が、保健室利用者ノートに私の名前を記す事もなくなってしまう
セル先生にとって私の存在が、きっとどうでもよくなってしまう

そんなのは、寂しい

「…」

「無理に健康になろうとがんばる必要は無いよ、531」

「…はい」

私のジレンマを知る由もないセル先生は
いつだって優しい言葉をかけてくれる
私は迷惑かけてばかりなのに…

「ふふふ、君が倒れてくれると、私は朝礼や職員会議をさぼれるからね」

にっ、とイタズラっぽく笑ったセル先生が
なんだかとっても可愛くて、目眩がするほど綺麗で
私の胸は痛いほどに高鳴っていた

いつか私の貧血症が治っても、私から目眩や動悸が消えることはないのかも知れないと
思わずにはいられなかったある冬の日の朝のお話。


おしまい
18 : 46 : 32 | 531セル 【書き手が>>1以外】 | page top↑
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