口づけの境界線

前スレ:イケメンになりました 3

247 ◆AC57OO8nhs [sage] Date:2008/12/18(木) 13:07:42.80 ID:r2tYowDO Be:
〜口づけの境界線

遠くの視界がぼやける
ピントを合わせるのに時間が掛かる

「…」

「どうかしたんですか?」

アイカメラの不調に悩んでいると、不意に神様の声が聞こえて
視線を上げるといかにも不思議そうな顔をして神様が佇んでいました

若干ピントを合わせるのに時間が掛かって、ぼんやりしていましたが

「いえ、修理を急いだものでアイがまだ不完全なんですよ…」

そうとも
本来なら少なくともあと三日はかかるものを、突貫修理で急いだものだから
細部はまだ修理されてないところもある
しかし、少し不便な程度で実生活に問題はない

「そんなに急がなくてもよかったんじゃないですか?」

「さてね」

「…?」

神様は私が急いだ理由など知りもしないのだろう
不思議そうに首を傾げ、幼い目で私を見ている

しかし身体が違うと考え方まで変わるのか
何故だかそんな仕草まで愛おしい
この目を通して神様を見るのは久しぶりだ
そう考えると感慨深いものもある
理由はどうあれとにかく愛しい、可愛い


248 ◆AC57OO8nhs [sage] Date:2008/12/18(木) 13:22:49.27 ID:r2tYowDO Be:
「私はあなたの傍で温もりを感じていられることが幸せなんですよ」

「ふふふっ、変な679さん」

ほら、あなたは私の急いだ理由など知りもせず笑う
それが理由だといえば、さらに笑うのでしょう

だが、それも悪くはない
神様の悪意のない笑い、私は好きだ

しかし…

「しかし目が悪いのは不便だ…、非常調整用の眼鏡掛けますか」

別に遠くの街がぼやけようが、タイルの床がいびつに見えようが
私には大した問題ではないのだが
神様を正確に認識するのに時間が掛かるのは大問題だ

『あるなら最初から掛ければ良かったじゃないですか』なんて、神様はケロリと言うが
私はあまりあれが好きではない
神様を正確に捉えられないよりは、何倍もマシではありますが

「えぇ…まぁ…常備品ですけど」

「?」

ジャケットの内ポケットから白い眼鏡ケースを取り出す
長いこと使ってないからこれも久しぶり

「ドラ○もんみたいですね。普通に考えて入らないものをポケットから出すのって」

「ホイポイカプセルと同じ理論ですよ」

「ふぅん…」

眼鏡ケースから黒のセルフレームの特殊レンズの眼鏡
ほんと、あまり好きじゃない…


251 ◆AC57OO8nhs [sage] Date:2008/12/18(木) 13:50:22.45 ID:r2tYowDO Be:
掛けた初っ端から、隣でクスクスと笑う声が聞こえる

「くすくす」

「…」

神様が言いたいことはよくわかる
しかしそこまで露骨な反応をされると…
しばらく待ってもくすくす笑い声は収まらない

「679さん、めがね似合いませんねー」

と、笑いに混ざって一言だけ

『だからイヤなんですよ』なんて返事を返すが、まだ神様は笑っている
些か笑いすぎではないだろうか…

「くすくす」

「はぁ」

「くすくすくす」

いくら悪意のない笑いだとはいえ、そろそろ笑い止んで欲しいのだが…
いっこうに止まない

気づけば神殿の陰からミスターポポがこっちを見ていた
笑うなよ、あなたまで絶対に笑わないでくださいよ
ミスターポポ


253 ◆AC57OO8nhs [sage] Date:2008/12/18(木) 14:06:48.97 ID:r2tYowDO Be:
どれほどの時間、そのくすくす笑い声を聞いたことか
神様がやっと笑い止んだのは、しばらく時間が経ってからでした

「ねえ、679さん?」

「はい」

名を呼ばれ、神様の方を見ると
笑いすぎたせいか、顔をほんのり上気させ、私の方を向いていた

「…あの、」

「何か?」

「きす…したいです」

「…」

ほんのりと上気していたのは笑いすぎたせいだけではなかったようです
菖蒲の花が開くように、見る見る内に耳の先まで染まってゆく

「…だめ、ですか?」

「…」

「二週間ぐらい、…してないから」

少しうつむきながら、上目遣いに
恥ずかしそうに顔を上気させて理由まで述べてくれてしまう神様は、実に愛らしい
そんな様子見せられたら、頼まれずともしたくなる

「…目、閉じて」

従順に瞼を下ろした神様に、そっと唇を重ねた

それは暖かく

柔らかい

ひどく久しぶりな幸せの感触


254 ◆AC57OO8nhs [sage] Date:2008/12/18(木) 14:22:08.99 ID:r2tYowDO Be:
柔らかな感触をしばらく楽しんでから、ゆっくり離す
ほんとに可愛い、愛らしい、愛しい

多少無理してでも修理を急いで良かったと、思えた

「神様」

「…あの、679さん」

恥ずかしそうな上目遣いに、また見上げられる
上目遣いの効果がわかってやってるとしたらたぶん神様最強

まさか神様に限ってそんな計算はないと思いますが…

「めがね…、外してもらって良いですか?」

「眼鏡?」

別に恥ずかしそうに言うような事じゃないような…
もちろん神様が望むのなら構いませんけど

「かまいませんが…何故?」

「めがね当たって少し痛いのと…」

「のと?」

「…べつのひとみたいで、落ち着かないです」

私が機械でなければ聴き逃してしまいそうな程、ためらい気味に小さな声で告げられた理由は
なんとも可愛い理由だった

「…なるほど」

「だめですか?」

申し訳なさそうな目をして、私を見上げる小さな神様は
あまりに可愛すぎて

「いえいえ、構いませんよ」

「ん…」

だって、口付けするほど近づけば、眼鏡なんか必要ありませんから

眼鏡を外し、私はもう一度神様に唇を重ねた

じゃまな境界線は、もう無い


おしまい

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