イケメンになりました 3

202 ◆AC57OO8nhs [sage] Date:2008/12/15(月) 20:58:37.16 ID:IjROLIDO Be:
>>194続き

仕方がない

結局私は一番最初に戻ることにした

他にも鉄腕少年型とか某助手兼掃除番のちょんまげロボットとか、なんか色々あったが
私にだって審美眼ぐらいある
さすがにあれらは引く
誰だあんなに使えない代替機ばっかり作ったのは

事情を話したら、神様も仕方が無しに認めたらしく
文句は言わないでくれるようになりました
実によかった

しかし
あまり取っ替え引っ替えしていると、動かし方の感覚がわからなくなってしまう
身体の修理が終わるまで二週間
多少の動きの取りづらさはあるものの、この身体につきあってもらうとしましょう


203 ◆AC57OO8nhs [sage] Date:2008/12/15(月) 20:59:45.59 ID:IjROLIDO Be:

「神様」

発声器官は多少違うが、音声データは私のものだから声は変わらない
多少音質は落ちてるかもしれないが、普通には気にならない程度のはずだ

『なんですか?』と、語尾を上げて私に返される幼い声も何の変わりもない

よかった
普段通りだ

内心、怖がられるか嫌われるかと気が気でなかったものだから
平常通りの神様は、すごく嬉しい

安堵して、ろくに許可も取らずにその小さな身体を抱きしめた

抱きしめたのだが…

「…」

「679さん?」

なんだ、これは


204 ◆AC57OO8nhs [sage] Date:2008/12/15(月) 21:02:17.38 ID:IjROLIDO Be:
一瞬、すべてが混乱して事態を飲み込めなかった

温もりが、わからない

腕の中に存在を抱きしめる感覚はある
なのに
温もりを、神様の暖かさを感じることが
できない

「…」

「679さん?」

首をひねって、心配そうに私をのぞき込む赤い瞳。

神様は、確かにそこにいるのに
腕の中抱きしめたのに
あるはずの温もりがわからない

「…」

なんなんだ、これは
温もりが、柔らかさが、わからない

温度があるという事実は解る
堅くないものであるという事実も解る

だが、それを温もりと感じることが
柔らかさと感じることが
できない

事態が信じられずに、小さな身体を抱きしめたまま思考回路が停止同然の動きをしていた

「679さん?」

不可思議そうに私のカメラアイを見上げる二つの目が、妙に遠く思えた

そこに、腕の中にいるのに
温もりを、柔らかさを感じられない


206 ◆AC57OO8nhs [sage] Date:2008/12/15(月) 21:03:55.13 ID:IjROLIDO Be:
私は半ば無意識に抱きしめた腕を離し、数歩後ずさっていた

これ以上、触れたくない。
抱きしめたくない。

触れたいのに、触れたくない
抱きしめたいのに、抱きしめたくない

温もりを感じられないのは
柔らかさを感じられないのは

寂しすぎる

神様が遠い

「どうかしたんですか?」

「…いえ」

だが、目の前で私を見上げる小さな姿に曇りはなく、どこまでも純粋で

この小さく無垢な、愛しい神様に無駄な心配をかけさせてはならない
そう
たかが温もりを感じられないぐらいがなんだ
温もりを感じられないのが怖いのならば触れなければいい。

触れなければ、温もりを感じられないことなどなんてことはない
私は神様の傍にいられるだけで幸せなのだから、それでいい。

私はそう自分に胸の中で言い聞かせ、平常を取り繕った
約二週間、神様に触れなければ良いだけの話だ。
…長い二週間になりそうな気はしますが


237 ◆AC57OO8nhs [sage] Date:2008/12/18(木) 10:14:54.11 ID:r2tYowDO Be:

679さんの身体が修理に入ってから、およそ一週間が経過しました。

早く戻ると良いですね



…でも
数日前から、679さんなんだか変です

毎日変わらず会いに来てくれるのに、ぼくを避けてるようにも見えます。

手を繋ごうとしたら、思いっきり引かれたり
679さんに触ろうとしたら、後ずさりされたり…

「ぼく、なにかしましたっけ…」

執務室の机に突っ伏して、ぼんやりと679さんのことを考えると
たった一週間前のことなのに
邪魔くさそうに髪を掻き上げる仕草や、照れると一層無表情になる姿が、だいぶ昔のことに感じてくる

「679さん、どうしちゃったんでしょう…」

もう三日も彼に触れてない
機械な鉄の身体になっているとはいえ、679さんは679さんですから
触れてないどころか回避されるのは寂しいし、すごく不安です

「嫌われ…たのでしょうか…」

でも、毎日いつも通りに会いに来てくれますし
触ろうとしたとき以外は至って普通に接してくれます


238 ◆AC57OO8nhs [sage] Date:2008/12/18(木) 10:18:46.51 ID:r2tYowDO Be:

それに、なにせ嘘が言えない679さんですから、嫌いになったとかそういう理由なら
そう隠して接していられるはずもありません
無表情なのに、679さんは考えや思いがすぐに態度にでますから。

でも、じゃあ一体なぜ…

考えても、考えても考えても、不安が増すばかりで答えなんか見つからない
なんで?なぜ?どうして?わからない

「ろく…ななきゅう…さ、ん…」

ほぼ無意識に、まだ来てもいない姿を呼ぶとなんだか寂しかった

このまま二度と彼に触れることがかなわなくて
近いいつかの日、すっと天界に来てくれなくなるんじゃないかとさえ思えました
霧のように、夢が覚めるように

「…6、79…さん」

冷たい鉄の肌だっていい、どうしても、肌で679さんを感じたかった
なのに、触れることはできない

触れたい

手を繋ぎたい

ぎゅってしたい


「…きす、したい」


いつからぼくはそんなにワガママになったのでしょうか
でも、したい
触るだけのキスでいいから
でもあの身体、口って…


239 ◆AC57OO8nhs [sage] Date:2008/12/18(木) 10:20:42.32 ID:r2tYowDO Be:




指先で唇なぞって最後のキスを思い出す
最後はいつだったかな…
恥ずかしくって拒んだりもしたから、結構前…

拒んだり、しなきゃよかった


自分の身体をそっと撫でて、最後に身体を重ねたのことも思い出す

よくわからないけど、胸をきゅうきゅう揉まれたっけ
ほとんど抓ってるような感じでしたけど
ちょっと…ううん、結構痛かったな

それでも
いっさい触ってもらえないよりは、きっとまし

服の中、手を滑らせ胸のあたりを撫でてみながらそう思った
逆の手は指先で唇と口の中の境界線をなぞって

いけないんだ
こんなこと

一人でえっちなことするの、きっといけないことだと思います
でも、止め方なんか解りません

身体の奥が、喉の奥がきゅんきゅんして、うずうずして
止まらない

「6…79、さぁん…」

「はい」

「…え」

呼んだ名前に返事があって、視線を上げると
そこに、彼はいた

青い機械の目を光らせて、無表情で
ただぼくをみていた


240 ◆AC57OO8nhs [sage] Date:2008/12/18(木) 10:22:40.14 ID:r2tYowDO Be:
でも
不思議とぼくには以前のような慌てはなかった
ただ頭の中がぼんやりして
視界に映る彼に触れたいと願っていた

「679さぁん…」

自分でもわかるほど鼻に掛かった甘い声
あぁ、何でこんな声がでるんだろう
見られてるのに、目の前にいるのに、手は止まらない
唇をなぞり、胸をなでる
きっと、今のぼくは何よりもはしたない

「ぼくに、触って?…679さん…」

「…」

679さんからの返答は、ない
薄青に光る機械の目も、申し訳なさげに斜め下にそらされて
もうぼくを見ていない

「…神様、何故」

「…だって、ぼくから触れようとしたら…679さんは、また避けるでしょ?」

「…」

「だから、…触ってください」
「好きな人と触れられないのは、寂しいです…」

言葉を言い終わるのが早いか、急に視界が暗くなって
堅くて冷たい感触がむき出しの肌に触れる

十秒ぐらい考えて、やっとそれから抱きしめられたんだとわかりました

氷のように冷たい金属の胸に抱かれているのに、不思議と気持ちは落ち着いてくる
変に興奮していた身体もだんだんもとどおり
疼いてたのも静かに消えていく

落ち着く…


241 ◆AC57OO8nhs [sage] Date:2008/12/18(木) 10:24:06.85 ID:r2tYowDO Be:
「…あなたを、そんな寂しい思いにさせていたとは存じませんでした」

「…」

「申し訳、ありません」

「…はい」

冷たい胸に身体を預け、不思議なほど落ち着いてきた世界の中
彼の言葉に生返事を返しながら、目を閉ざして彼からする音に耳をそばだてていた

かしゃかしゃ、かしゃかしゃ
それはいつもの679さんと何ら変わらない考えごとの音

なにを考えているのかは解らないけど、なんだか落ち着けた
ずっとその音を聞いていたいとさえ思えました



どれほどの時間をそのまま過ごしたのかわかりませんが
いつしか、冷たかった金属の肌にはぼくの体温が移り
かしゃかしゃという音も止んでいました

耳を押しつけた胸から聞こえるのは、静かな機械音だけ

「679さん…」

安堵からか、ぼくを襲う睡魔
彼の胸に身体を任せたまま、ぼくはそのまま…
ゆっくり、うっとり、溶けるように眠りに落ちていった





242 ◆AC57OO8nhs [sage] Date:2008/12/18(木) 10:24:55.50 ID:r2tYowDO Be:
……

神様をそんなにも寂しい思いにさせていたとは思いもしなかった
私の勝手な判断で、そんなにも

しかし、神様の温もりを感じられないのは寂しすぎる
一時間近く抱き締めていたのに、温もりはほんの少しも解らなかった
悲しいが、それが真実だ

ならばどうしようか
必然的に答えは一つだ

私は決意をし、天界を後にした


……


243 ◆AC57OO8nhs [sage] Date:2008/12/18(木) 10:26:24.87 ID:r2tYowDO Be:
……


目を覚ましたぼくの傍に、679さんはもういなかった
乱れてた服も正されて、すべてが夢だったんじゃないか心配になるほどに


それから二日間
679さんの姿を見ることはなかった
本当に、霧のように、夢のように彼が消えてしまったような気がしました。

でも、三日後の朝

「おはようございます。神様」

「…」

まだぼくがベッドから抜け出してもいないほどの早朝
彼は無表情を引っ提げて、ぼくの顔をのぞき込んでいた

邪魔くさそうに髪を掻き上げながら


おしまい


244 ◆AC57OO8nhs [sage] Date:2008/12/18(木) 10:39:59.49 ID:r2tYowDO Be:
さぁーて、次回の679さんはー?

おはようございます、679です
休みの日の朝っぱらから妹型に虐められてちょっとお兄ちゃんはめげそうです
私が一体何をしたと


さて次回は
○どらめもデンデ、えっちな事にも興味津々
○現代デンデ、口づけの境界線
○人形師、星空の下で

の三本です、ははは


つづく!!
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