鉄のへいたい 続き

前スレ:鉄のへいたい

148 ◆AC57OO8nhs [sage] Date:2008/12/07(日) 23:49:54.02 ID:fPnuNADO Be:
機械の兵隊、続き
ちょっと血とか死体とかそういうのも出てくる話になるから苦手な人は注意してね

あと、ハッピーエンドでは無いから
死ぬから。死にネタが苦手な人はやっぱり注意
ごめん




そう許可を取ると、小さな医療スタッフは機械の兵隊の隣にちょこんと座り
それから、二人は他愛もない話をしました
軍舎の中のこと、外のこと
戦争なんか無い、デンデの故郷のこと…

といっても、機械の兵隊は今朝生まれたばかりのようなものですから、世の中知らないことの方が多いので
小さな医療スタッフの他愛もない話に相づちを打つだけでしたが
それでも、機械の兵隊にとってはこれ以上無いほど幸せな時間でした


どれほどの時間をそうして過ごしたでしょうか
気が付けば広間の大時計が、ぼぉん、と鳴り
深夜十二時が来たことを告げていました

そして宴も酣
宴に参加していないのは機械の兵隊と小さな医療スタッフだけです
辺りは飲めや歌えの大騒ぎ

戦争は始まったばかりだというのにそんな宴が毎晩のように続き
機械の兵隊と小さな医療スタッフは毎晩宴の度に、雑踏から少し離れた同じ長椅子で他愛もない話をするのが日課になっていました。


149 ◆AC57OO8nhs [sage] Date:2008/12/07(日) 23:52:18.26 ID:fPnuNADO Be:
小さな医療スタッフから見れば、機械の兵隊は軍の中で初めて自分の話をまじめに聞いてくれる人で
機械の兵隊から見れば、小さな医療スタッフは自分の知る事のない平和な世界の話をしてくれる人

さらに小さな医療スタッフはひどく可愛らしかったですし
機械の兵隊もそれなりには男前に作られてありましたから
戦火の中、お互い惹かれ合うにはそう時間は掛かりませんでした。

そんなある日の夜のことです

「よう」

「…何か?」

長椅子に腰掛け、小さな医療スタッフを待っていた機械の兵隊に近づき、話しかけてきたのは
酒に酔い、赤ら顔をした濃い髭で熊のような軍師でした

「お前、この前入った機械の兵隊だろ?」

「…」

「機械で死なないからっていい気になるなよ、お前だって俺から見れば結局は捨て駒なんだからな」

「…」

言い方が気に食わなかったので機械の兵隊は聞こえなかったフリをしました
酒に酔った軍師はしばらく何かを言っていましたが、機械の兵隊が完璧にシカトこいていると
一つ舌打ちをし

「今に見てろよ」

と、言い残して宴に消えて行ってしまいました

しかしそんなことは機械の兵隊にとってどうでもいいです

150 ◆AC57OO8nhs [sage] Date:2008/12/07(日) 23:53:15.22 ID:fPnuNADO Be:
またその夜も、小さな医療スタッフと他愛のない話をして
その一時が、機械の兵隊は最高の幸せで
それだけが機械の兵隊にとって『どうでもよくない』時間で
それだけで、明日の残酷な戦いも乗り越えられる。
そう、その夜も思いました。


152 ◆AC57OO8nhs [sage] Date:2008/12/07(日) 23:58:30.45 ID:fPnuNADO Be:





明くる朝
機械の兵隊は最前線に送り込まれました。
血が飛び散り、人の命がむざむざ散って行く戦場の最前線

敵か味方かもなくなった死体の山
それらが作った血の池を越え
無慈悲な鉛の玉を乱射する

けど、機械の兵隊はどうとも思いません
すべてはただ将校や軍師から下される命令のままに

しかしおかしなことに
軍師の命令に従い、進軍していると
あれよあれよと敵に囲まれてしまったではありませんか。
軍師の仕業か運命か
こんなに囲まれてはいくら機械の兵隊とはいえ勝てるわけがありません

あっと言う間に捕まり、捕虜にされてしまいました。
あぁ、なんて間抜けな機械の兵隊なのでしょうか


153 ◆AC57OO8nhs [sage] Date:2008/12/08(月) 00:00:27.65 ID:4JiJDsDO Be:
しかしながらさすがは機械
捕虜になってからの尋問拷問なんのその
首に剣を押しつけられようが、縛られ多数に殴られ蹴られようが
一切何も吐きません。
基地の場所も軍の規模も、なんにも

もちろんそのようにプログラムされて作られているからなのですが
機械の兵隊にとってはそれだけではありません

基地にはあの小さな医療スタッフがいますから
基地の場所だけは壊されても絶対に吐かない、と機械の兵隊はブリキの胸に決めていました。
あの小さな医療スタッフの為と思えばどんな拷問もつらくありません

でも、ただの一つだけ
そんな機械の兵隊にもつらいことがありました

それは、もう二度とあのかわいい小さな医療スタッフに会えないだろうということです

あんなに可愛いのだから、言い寄る男はごまんといるだろうな
自分の事なんてとうに忘れられてしまっているんだろう
あと一度だけでもいい、一瞬だけでもかまわないから
あの子の声が聞きたい。姿が見たい。小さな肩に触れたい。気配を感じたい。

いつの時も機械の兵隊のブリキ製の胸の中には、もう二度と会えることもないだろうかわいいあの子のことだけが溢れていました。


154 ◆AC57OO8nhs [sage] Date:2008/12/08(月) 00:03:23.96 ID:4JiJDsDO Be:
そんなように、小さな医療スタッフの事だけを考え、尋問を受ける日々が続いたある日のことでした

ずどぉん、と、捕虜牢までに響きわたる大きな爆裂音
襲撃です
あたりはばたばたと騒がしくなり、この隙にとばかりに逃げ出す捕虜達もたくさんいました
もちろん機械の兵隊も例外ではありません。

こんな敵軍にいるよりは、逃げ出してさ迷う方がまだあのちいさな医療スタッフに会える可能性があるかな、とか考えながら
襲撃にばたばたしている敵の軍舎をあとにしたのでした

しかしなんと運の悪い機械の兵隊
やっと軍舎からしばらく離れたところで、背後からがしゃりと冷たい銃口を背中に押しつけられ、男の兵に捕らえられてしまいました
本当に運のない…

「所属と階級、名前を言え」

「…」

「言うんだ!」

黙りを決め込んでいると、ぐりぐりとより強く押し付けられる銃口
これが銃剣じゃなくて本当によかったと思わずにはいられませんでした
もしも銃剣だっなら、もう背中に刺さっていたでしょうからね


155 ◆AC57OO8nhs [sage] Date:2008/12/08(月) 00:06:24.41 ID:4JiJDsDO Be:




「所属と階級、名前を…」

「R軍所属、679二等兵」

「R軍!?」

驚いた声と、背中から消える銃口の感触
機械の兵隊がおそるおそる、首だけで少し後ろを見てみると
なんということでしょうか
その男はR軍、つまり、機械の兵隊が所属していた軍の軍服を着ているではないですか
なんという偶然!
機械の兵隊ってば運の良いこと

「…まさか、配置されてすぐに敵に捕まった機械兵じゃないだろうな…」

「覚えておいていただき、光栄です」

「…」

男は呆れ顔でため息を吐きながらも、機械の兵隊を軍舎まで連れ帰ってくれました
良い人ですね

そうこうして実に数日ぶりに返ってきた所属軍の軍舎!
別にこれといって感慨深くなるようなことはありませんが
軍舎の中は相変わらず騒がしく、ぐるりとあたりを見回した先にはちいさな医療スタッフの姿もありました
あぁ、帰ってこれたんだな…

なんて感傷に浸ってる暇はありませんでした
いきなり軍舎に響きわたる、耳をつんざく轟音

それは敵襲でした
どういうわけか基地の場所がバレてしまったようです
さっきの襲撃の仕返しに来たのでしょう


156 ◆AC57OO8nhs [sage] Date:2008/12/08(月) 00:08:50.97 ID:4JiJDsDO Be:
皆手に武器を取り出撃です
むろん機械の兵隊も例外ではありません

敵を軍舎に入れるわけにはいかないのです
愛しい小さな医療スタッフを守るために

しかし戦いは非情に残酷で
見る間見る間に味方は敵に押されて、あたりは死体の山、血の海

戦場には所々火の手も上がり、行くも帰るもままなりません
しかし、機械の兵隊に退くことは許されません
いいえ、許されたとしても退きません。
退けません。

ごうごうと燃え盛る炎の中、機械の兵隊は最後まで愛しい存在のために戦いました
でも、そのときは確実に近づいていました

敵を一掃し終えた頃には、機械の兵隊はもう一歩も動けないほどにぼろぼろになっていました
がくりと地面に膝をつき、手に握る力も失い、銃と軍刀も地に落としてして

でも、機械の兵隊は誇らしい気持ちでいっぱいでた
最後の最後まで、誰かのために戦えたから
機械の兵隊は幸せでした

そのときです。
炎の熱に揺れる視界の端に、機械の兵隊は信じられないものを見ました。


157 ◆AC57OO8nhs [sage] Date:2008/12/08(月) 00:13:21.95 ID:4JiJDsDO Be:

それは
小さな、愛しい医療スタッフでした

機械の兵隊は最後の力を振り絞り、立ち上がって小さな医療スタッフの元によろよろと近づきました
走るほどの力は残っていませんでしたから
よろよろと、亀よりも鈍いほどの歩みでしたが

すると小さな医療スタッフも機械の兵隊に気づき、その名を叫びながら機械の兵隊の元に駆けてきたではないですか

どちらからともなく、きつく抱き締めあいました
炎からはもう逃げられないことを二人は知っています

燃え盛る炎の中、会話は何もなく
小さな医療スタッフは自分の身体が焼けてゆくのを感じ
機械の兵隊は自分の身体が溶けてゆくのをただ感じていました

そのまま戦場は三日三晩燃え続け、全てを焼き払い
燃えた跡には何も残らなかったと
骨さえも、何も

残ったのは、真っ黒に焼け焦げた星のバッジと、ハート形した煤の塊だけ




おしまい

00 : 13 : 43 | 679デンデ 【書き手が>>1以外】 | page top↑
| ホーム |

プロフィール

Author:picoma
VIPに投稿された「ピッコロと俺の結婚生活」から派生したお話のまとめサイトです。
簡単な解説はカテゴリの説明にて。

お話を連続して読むためだけの目的で作成していますので、途中のレスなどは省かれています。
現行スレへのリンクは、混乱を避けるためしておりません。コメント・トラバも受け付けておりません。ご了承下さい。
リンクは基本辞退させていただきます。

過去ログはカテゴリの一番上からご覧になれます。

ご用のある方はメールフォームをご利用ください。

最新記事

月別アーカイブ

カレンダー

10 | 2009/11 | 12
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 - - - - -

カテゴリ

リンク

検索フォーム