「雪降りましたねー」
降り注ぐ白い朝日の中
灰色のアスファルトをうっすらと覆う白い雪の道を、楽しそうに踏み締めながら歩く小さな緑の影一つ
その後ろに、小さな影に歩調を合わせてゆっくり歩く男の影も一つ
会話らしい会話はない
小さな影が一言二言問いかけると、もう一方は軽く頷いて必要最低限の返事を返すだけ
「寒いですねぇ、雪こんなに降っちゃって」
「そうですね」
「今年はもう根雪になるのかな…」
「かもしれませんね」
いくらかそんな会話が続いてからか、小さな足がぴたりと歩みを止めた
踵を軸にくるりと振り向き、男に向けられたのは少しばかり不機嫌そうな顔
ぷぅと頬を膨らまし、男を見上げる膨れっ面
「もうっ、さっきから679さんそればっかり。会話は言葉のキャッチボールですよ?」
「…」
「679さんのは会話の千本ノックですっ、ちゃあんと投げ返してくださいよ!」
116 ◆AC57OO8nhs [sage] Date:2008/12/04(木) 02:39:23.55 ID:KrEC3oDO Be:
「…ではデンデ。カルゴは?」
しばらく間を置いて、やっと男の投げかけ
なのに小さな影はまだ不満そうな膨れっ面のままだった
「カルゴがいないとだめですか?」
ふてくされたように吐き出された言葉
男はいいえと首を振ったが、小さな影はいかにも聞こえてないそぶりで言葉を続けた
「いっつもなにかあるとカルゴカルゴって、ぷーっ679さんなんか迷子になっちゃえばいいんです!」
「あ」
走り出す小さな影
たたたた、と軽快な足音と一緒に角を曲がって男の視界から姿を消した小さな背中
「…」
『やれやれ』なんて言わんがばかりなため息を吐き、男は視線を落としたまま歩みを進めた
小さな影が曲がった角をそのまま曲がり、ゆっくり立ち止まらずに歩き続けた
ひどい方向音痴のはずが、一歩の迷いもなく
「…」
男の行く手、電信柱の影からは小さな触覚二本が覗き、心配そうにゆらゆら揺れてる
気づいているのかいないのか、小さな影は不機嫌そうながらも心配顔で男の姿を道の脇のカーブミラーに映して見ていた
117 ◆AC57OO8nhs [sage] Date:2008/12/04(木) 02:43:04.72 ID:KrEC3oDO Be:
「デンデ、遅刻しますよ」
「…なんで?」
電信柱の横に並んだ男がぽふぽふと小さな頭を撫で、その頭に乗った真新しい雪を払い落とすが
小さな影は心底不思議そうに男の顔を見上げていた
「普段ならコレぐらいの距離でも迷うじゃないですか、なんで…」
「…」
方向音痴な男はコレぐらいの距離でも余裕で迷子になれるはず
なのになぜ今日は迷わずにまっすぐ歩くのか、と不思議でたまらない小さな影に
男は黙って足下を指さした
指さした先にあるのは足跡もまだ疎らな真っ白い雪の道だけ
「…?」
「足跡ですよ」
あ、と声を上げて驚いた顔をする小さな影
回避する間もなくその小さな手を手に握り、男は止めた足を再度前へと進めた
118 ◆AC57OO8nhs [sage] Date:2008/12/04(木) 02:47:47.13 ID:KrEC3oDO Be:
「あ、679さん違う。まっすぐですよ」
「あ」
右の角を曲がろうとした男の手をくいくいと引っ張り、間違いを指摘する小さな影
『やれやれ』なんて、いかにも仕方がなさそうにため息を吐いたが
その表情は満更でもなさげに笑っていた
「しかたがないですね、679さんは」
小さな手は冷たい
大きな手も冷たい
なのにつないだ手は暖かく思えた
おしまい
尚、カルゴは日直なので先行きました。
ロリ二人と両側から手をつないで仲良く登校も良いけど、たまには二人きりも良いよね!