…
デンデ「ふぁ…」
679「キスはだいたい克服されたみたいですね」
デンデ「…怖がる隙も無いじゃないですか」
679「隙なんか見せるわけ無いじゃないですか」
デンデ「…」
679「さぁ、神様…」
デンデ「いや…」
679「ではご自分で脱ぎますか?」
デンデ「…」
679「大丈夫、私に任せて…」
デンデ「ん…」
679「美しいですよ、デンデ。とても」
デンデ「恥ずかしい…怖い…」
679「大丈夫、さぁ…」
93 ◆AC57OO8nhs [sage] Date:2008/12/01(月) 21:12:43.89 ID:EXxALwDO Be:
ぴーぴーぴーぴゃー♪
679「ちっ…電話空気読め」
デンデ「…」
679「失礼」
ぴっ
679「…はい、はい」
679「はい、わかりました。直ちに向かいます」
ピ
679「すみません、急ぎの呼び出しと用が入りました」
デンデ「え…」
679「続きは後日と言うことで、では」
デンデ「…あの」
デンデ「679さん、帰っちゃいました…」
デンデ「…」
デンデ「脱がすだけ脱がして放置とか、ちょっとひどい…」
ドキドキしたのになぁ
脱がされかけて、外気に晒された肩が少し寒かった
寒い、とはいっても本当に寒い訳じゃなくて
気分的に
寒いような、寂しいような…
幼い日から四年の月日が流れて、ぼくはおとなになりました
けど…
679さんの態度が、あの頃と比べると少し素っ気無い気がします
現に今だって、二言三言であっさり帰っちゃいましたし
あの頃なら、急用が入ったときでも最後にもう一回ぐらいキスしてくれたのにな…
「…」
ぼくが性的なことを怖がるようになったから、嫌気がさされてしまったのかも
それともやっぱり679さんは…
「いわゆる、ろりこん…なのでしょうか」
94 ◆AC57OO8nhs [sage] Date:2008/12/01(月) 21:14:34.23 ID:EXxALwDO Be:
ふと移した視線の先にある鏡の中
脱がされかけて肩を晒し、情けない顔したぼくが移っている
この星にくるずっと前から憧れだったネイルさんやピッコロさんよりもかなり貧弱な身体
情けない顔
…
まったくため息がでる
戦闘タイプのネイルさんやピッコロさんと、そうではないぼくとではあまりに違いすぎて
比べた自分があんまりに悲しくなる
「ははっ、違って当たり前なのに…」
…当たり前なのに
ベッドに身体を投げ出し、なにもない天井を見上げる
寂しかった
寂しいなんて、子供じみたこと大人になれば思わないと思ってた
なのに、今現にぼくは寂しいと感じている
…
ぼくは大人になりきれてないんだ、きっと
大人に…
「あ」
そうだ
大人と言えば…
ぼくはベッドから転がるように身体を起こし
脱がされかけたままになっていた服を正しながら慌ただしく執務室へと向かった
執務室の机、引き出しの奥…
がたばたと引き出しの中の物を掻き出し、必死に探す
確かこの引き出しの奥に…
「あ…れ?」
無い、無い…
ぼくのたてる騒音を怪しんだポポさんが何度か覗きに来たけど、気にしてられない
無い、無い、無い
「…無い」
95 ◆AC57OO8nhs [sage] Date:2008/12/01(月) 21:17:28.67 ID:EXxALwDO Be:
幼い日に、679さんのことを忘れようとハンカチに包んで机の引き出しに隠した鍵と指輪
それが、無い
確かにしまったのに
あれから一度も取り出したことなんて無かったのに
胸が破裂するんじゃないか心配になるぐらいばくばくした
まさか無くした?
どうしよう…
どうしよう
「…」
もしも679さんに知られたら…
いいえ、あんな大切な物を無くしてしまうなんて
頭が混乱した
どうしよう、どうしましょう…
「どうしよう…」
ねっとりとしたイヤな汗が背筋を伝う
困ったなんて簡単な言葉じゃ片づけられないほど、困った
まさか去年の大掃除の時に間違って捨てたとか?
どうしよう
いや、まさか
記憶違いで他の引き出しにしまったとか、探し足りないとかかもしれない。
うん、きっとそうです
でも
すべての引き出しをひっくり返す勢いで探すが
やっぱり無い
無い、無い…無い
ポポさんに怪しまれても、外が日も落ちて夜になっても
まだまだ探したけれども、無い
「…かみさま 夜」
「わ、わかってます、わかってますけど…」
「寝ないと 身体 よくない」
「でもっ…」
96 ◆AC57OO8nhs [sage] Date:2008/12/01(月) 21:19:24.08 ID:EXxALwDO Be:
眠れるわけなんか無かった
今夜はきっと羊を何匹数えても眠れないに決まってます
こんな状況じゃ…
「…」
ポポさんに促され、落胆と後悔に支配された胸を抱えて部屋に戻る
ベッドに身体を預けてもやっぱり、眠れるわけがなかった
後悔と自責の中、目を閉じる
瞼の裏に浮かぶのは、679さんにこの事態が知られてしまう光景だけ
もし知ったら彼は怒るでしょうか、悲しむでしょうか
「…」
どんな顔して明日から679さんと話をしたらいいのかわかりません
とにかく明日が、来てほしくなかった
けれどもいつの日も朝は来る
どんな日でも、朝日は登る
朝に怯え、明日に怯え、頭まで深く毛布をかぶっていても
朝は無情に姿を現す
時が待ってくれるワケがない
朝を迎え、無情な日差しの下
昨日散らかした机の中の物を片付けながら
ただ過ぎて行く時に何もすることできるわけなくて
一秒一秒確かに679さんの来る時間が近づいてきていた
かつん、と堅い足音が一つ
きた…
散らかした紙類を片付けていた手に力が入り
くしゃと紙が歪む
「神様、おはようございます」
「あ、ぁ…おはようございます」
97 ◆AC57OO8nhs [sage] Date:2008/12/01(月) 21:20:05.13 ID:EXxALwDO Be:
平静を装い、笑顔を作り昨日と同じように振る舞えるよう自分を保つ
少しでも何かあれば簡単に崩れてしまいそうな平静
679さんが何も気づかないように祈りながら片付け続けた
でも、世の中は無情だ
「神様、昔渡した指輪と鍵についてですが…」
息が、鼓動が止まるかと思った
むしろ世界が止まってほしいぐらいだった
ぼくは…
A・ごまかせ
B・正直に言え
102 ◆AC57OO8nhs [sage] Date:2008/12/01(月) 23:35:46.73 ID:EXxALwDO Be:
「ごめん…なさい」
「?」
隠せるわけがない
あんなに大切なもの無くしたなんて
隠し通して許される物じゃない
怒られるかもしれない、失望されるかもしれない
怖かったけど
けど
きっとここで嘘をついたらぼくは後悔する
嘘を言えない679さんに嘘を吐くなんて
許されることではない
「無くしたみたいなんです…、探しても、見つからない…」
申し訳なさに視界が滲んで声が震える
とにかく申し訳なくて、恥ずかしくて、彼の顔も見られない
いま679さんはどんなことを思っているのでしょうか
怒っている?悲しんでいる?呆れている?
失望している?
「あの、神様?」
「っ、ぅ…ごめんなさ…っ」
「あの、いえ、そうではなくて…」
白い手が、歪んだ視線の先に差し出したのは、記憶の隅に見覚えのある白いハンカチ
あの、ハンカチ
なんで?
何が起こってる?
視界がクリアになる一方で頭が混乱し始める
「…なんで、ですか?」
ぼくにはそれしか言えなかった
103 ◆AC57OO8nhs [sage] Date:2008/12/01(月) 23:37:48.92 ID:EXxALwDO Be:
「四日前、神様の引き出しが開きっぱなしになってまして。これを見つけました」
「去年、うちのマンション防犯対策で一斉的に鍵が変更されましたので、キーホルダーの鍵を勝手ながら変えさせていただきました」
679さんは淡々と続けた
「指輪の方は銀製品ですから、真っ黒になってましたので、こちらで磨かせていただきました」
「…」
「では、まとめてお返しいたします」
淡々とした口調の末
静かにぼくの手のひらに握らされた、鍵と指輪を包んだ白いハンカチ
679さんは至っていつも通りで
それさえなんだか無性に悔しくなってしまって
彼が壊れない程度、飛ばない程度の力を込めてこぶしの側面で彼の胸を叩いた
「…なんで一声かけてからにしてくれないんですか!」
105 ◆AC57OO8nhs [sage] Date:2008/12/01(月) 23:40:37.57 ID:EXxALwDO Be:
何度も、何度も、ぽすぽすと叩いた
悔しいのに、悔しくてたまらないのに笑いがこぼれて頬がゆるむ
「せめて一声かけてからにしてくださいよ!そういうのはっ!」
「申し訳ありません」
「もう…、無くしたと思って…慌てたじゃないですか…」
「無くしても慌てるような物じゃないですよ、鍵は変わってますし指輪はそう高いものじゃないですから」
「そういう問題じゃなくてっ!」
叩くのをやめ、両手を彼の胸に当てたまま
自分の手に額を押し当てた
恥ずかしくて、顔は見上げられないですけど
カシャカシャと聞こえるかすかな音に彼も何かを考えていることがわかります
でも、こればっかりは譲れない
「だって…大切な、約束の物なんですから」
「…」
「無くしたく、無いじゃないですか…約束」
やっと見上げた彼の顔は、無表情の中でどこか笑んでいるように見えた
おしまい
あの、ぽこぽこ叩かれるのすげー萌えるよね
ちっちゃい子がするのがかわいい
すげー好き