セルさんがオカマバー進出

780 ◆PICorehgzw [sage] Date:2008/09/13(土) 20:33:53.78 ID:drgNQlEo Be:
〜〜セルさんがオカマバー進出〜〜

「随分と暗いのだな」
「ウチはねー、そうねー、でもすぐ目慣れるわよー」

想像通りのいわゆるオカマ声。
余りマジマジと見るのは失礼なのだろうか?と思いながらも視線が外せない。
慣れているのだろう、彼女はにっこり笑いながら席に案内してくれた。

「ほらー、いきなり明るいと入ってきてすぐにウゲッてなっちゃうでしょ〜。ワンクッションよぉ」

でかい図体をわたしの後ろに隠すようについてきていたコルドが噴出す。
それをにこにこ眺めて、彼女が真ん中あたりのソファを指した。

「こちらにどおぞー。ウチはねー、きょうねー、ショーはないんだけどぉ」
「そうか、残念だ」
「週末だけなのよぉ。また週末いらしてねー」

わたしの隣に、妙にオドオドしながらコルドがどっしりと座る。
ソファが悲鳴を上げたがなんとか壊れずに済んだ。
見渡せば結構な客の入りだ。ショーのない平日でも繁盛しているとは中々なのだろう。

785 ◆PICorehgzw [sage] Date:2008/09/13(土) 20:59:38.43 ID:drgNQlEo Be:
にこにこ笑いながら彼女がコルド側に座る。
コルドがあからさまにビクッとしていたが、
気分を害した風もなく「怖がらないでよぉ〜取って食いやしないわよ」と彼女は笑う。
不思議な容貌だ。
不快感はないが只管不思議だ。ついじっと見つめてしまう。
こちらのカタガタオカマ初体験ですってよ〜、の声に、数名のホステスが集まってくる。
どのホステスも不思議な容貌だ。

「1人くらいはキレイどころ来なさいよ〜〜」
「レオナちゃん!レオナちゃんどこよお!」
「このまんまじゃこのカタガタ、オカマがトラウマになっちゃうわよおwwwwwwww」

確かにコルドは妙に怯えている。
わたしは興味深いと思うのだがな。
ベタベタと触れられる度に、コルドがひいと息を呑んでいて、
それが面白いので眺めていた。
たまに助けを求めるような視線を向けられるが、黙殺した。面白いから。

「ほんと逞しくてステキだわぁwwwwwwww」
「きゃー手ぇおっきいぃ〜〜」

ドスのきいた声で嬌声を上げながらコルドを玩ぶ彼女たちは、
とても可愛らしく見える。


787 ◆PICorehgzw [sage] Date:2008/09/13(土) 21:06:36.37 ID:drgNQlEo Be:
「はあいレオナでぇす」

やはりオカマ声だが、他のホステスよりだいぶ女性らしい声。
はやし立てる低い声の中で一際可愛らしい。
お隣お邪魔しまぁすと甘ったれたような喋り方で挨拶し、わたしの隣に座った彼女が、
ビクッと動きを止めた。

コルドを楽しく眺めていたわたしが視線を向けると、
ぱっと顔を逸らされる。
ふわふわのウェーブの茶髪が彼女の顔を隠してしまった。
他のホステスに比べれば華奢な肩。
なるほどこれが彼女たちの言っていたきれいどころか。

「こちらを向いてくれないのかい」

ぐぐぐっとますますそっぽを向かれてしまった。
どうしたのよレオナちゃあん、などと、他のホステスも暫く様子を窺っていたが、
やがてすぐにコルドに興味を移した。
逞しい体つきはモテるのだろうか。

「……レオナ、というのだな。何か気分を害したか?」


790 ◆PICorehgzw [sage] Date:2008/09/13(土) 21:26:46.04 ID:drgNQlEo Be:
「い、い、い、いえ」

先ほどよりも甲高い声。
はてな。
やはりレオナはこちらを向いてくれない。

理由もわからず顔を逸らされていれば、その理由を知りたくなるのは当然だろう。
背けられたレオナの顔を覗き込むようにぐい、と顔を近づけた

「やッ!」

女の子らしい悲鳴と共にレオナが逃げるように立ち上がり、ダッシュで逃げていく。
後に残されたわたしはぽかんとその後姿を見送るしか出来なかった。

「ちょっとお、レオナちゃあん??」

他のホステスが驚いたように声を掛けるが、
なんでもないです、と言い残して彼女は控え室らしいドアを潜って消えてしまった。
視線を戻すと、他のホステスがいぶかしげにわたしを見ている。
参ったな、とあらわすように私は両手を軽く掲げた。

「……天に誓ってわたしは何もしていないよ」
「どぉかしらーレオナちゃんかわいいからーwwwwww」
「あたしならどんどんセクハラしてもいいのよwwwwwwww」

レオナが座っていた場所に他のホステスが身を寄せてくる。
壊れかけた空気を修繕するように、過剰なほどに盛り上がるホステスたちに合わせて
わたしもその夜は少しはしゃいだ。

コルドは途中で泣きそうになっていたが、
少し引っ込み思案なところのあるヤツには良い社会勉強になっただろう。


793 ◆PICorehgzw [sage] Date:2008/09/13(土) 21:40:47.37 ID:drgNQlEo Be:





さてそして私はその次の夜、
今度は1人でそのオカマバーを訪れた。
あらっ、という表情でホステスが出迎えてくれる。

「今日も来てくれたのー?わぁうれしい〜」
「指名してもいいかな」
「あらっ勿論あ・た・し・よねっ」
「ははは。君も可愛らしいが……レオナを」

そう囁くと、彼女は一瞬笑顔を強張らせて、それからすぐに自然に笑いなおした。

「あぁーごめんなさい、レオナちゃんはちょっと」
「だいじょうぶです」

断ろうとした彼女の言葉にかぶせるように、
甲高い声が響く。
おずおずと近づいて来る、他のホステスに比べれば華奢な…
それでも女性ではないと解る骨格の持ち主。
俯きがちな彼女は、わたしが話していたホステスとこそこそと会話を交わして、
それからわたしを見た。


794 ◆PICorehgzw [sage] Date:2008/09/13(土) 21:51:07.08 ID:drgNQlEo Be:

少し硬い口調とぎこちない動作で、
かなり奥まった席へと案内をしてくれたレオナが、
少し不自然に間を空けて隣に座った。

余りに緊張している様子に、少しだけかわいそうな気持ちになる。
これはこちらから切り出すべきなのだろうか。
殆ど興味本位に近い動機で訪れたので罪悪感も感じる。
だが、わたしが口を開く前に彼女から話し出してくれた。

「その……また、来てくれるなんて思いませんでした……」
「そうかい」
「もう……会えない、と…思って、いた、ので」
「どうしてだ?」

そこで彼女はぐっと息を止め、それからゆるゆると細く吐き出してますます俯いてしまう。
レースのカーディガンに包まれた肩を抱き寄せてあげたいと思った。
だがひとまず、彼女の話を聞くことにする。

「その……だって……退きません、か?」
「いいや、まったく」

考えることなくそう返すと、彼女はぱっと顔を上げてこちらを見た。
わたしの表情にウソが滲んでいないのか確かめるような目つきで。


799 ◆PICorehgzw [sage] Date:2008/09/13(土) 22:02:17.44 ID:drgNQlEo Be:
「……ほんと、ですか?」
「ああ」

ほんの少しほっとしたような表情で、レオナが小さく頷いた。
よかった…と小さく呟いた声も、やはり作られた女性を目指す声。
わたしは、彼女の地声を知っている。

「その…私は、こういうことをしてますけど…べつに、男が好きなわけじゃ、なくて」
「知っているよ」
「はい……」

水割りを作る手が震えていた。
明るい場所で見れば普通に男らしく見えていた手だが、
薄暗い店内のせいか妙に白く女性らしく見える。

「そんなに緊張しないでくれたまえ。わたしは楽しんでいるよ」
「……はい … ぁ」

マドラーを持つ手に、重ねるように手を置いた。
びくんと震える様は妙に女の子らしく見えて、小さく笑いが浮かぶ。

「今は……>>531ではなく、レオナと呼んだほうが良いんだな?」


806 ◆PICorehgzw [sage] Date:2008/09/13(土) 22:15:19.44 ID:drgNQlEo Be:
レオナが可愛らしい仕草で頷く。
わたしの手に包まれた手が動くことも出来ずにじっとしているのを良いことに、
ゆっくりとその手の甲を撫でてみた。
目線はレオナの横顔から外さない。

完全な女性には、見えない。
だが、確かに他のホステスに比べれば整頓された顔をしている、と思った。
いつもの、男にしか見えない>>531の横顔と作りは同じはずなのに、
随分と味わいが違う。

輪郭を象ったウェーブの髪のせいか、
濃い目のメイクのせいか解らないが、
その違いがわたしには楽しいものに感じられた。

「レオナ、こちらを向いてくれるかい」
「……セルさん」

つけまつげに囲まれた目がこちらをおずおずと見つめる。
怖がっているような表情は、無条件にやさしくしてやりたいと感じるものだ。

「…わたし、……おかしくありませんか?」
「キレイだよ」

素直に言葉にすることが出来た。


813 ◆PICorehgzw [sage] Date:2008/09/13(土) 22:38:24.74 ID:drgNQlEo Be:
「……うれしいっ」

レオナの表情がぱあっと輝いて、幸せそうに笑みを浮かべた。
それは確かに、可愛らしいと形容しても良いように思われる。
自然とわたしのもう片方の手が、彼女の耳辺りに伸びていった。

「女になりたいわけでもないんです…、ただ、この格好が好きで」
「そうかい」

落ち着いたらしいレオナは、わたしの手から逃げない。
そっと耳元の髪を書き上げて耳の向こうに払った。
するとレオナは嫌がるようにぷるぷると顔を振る。

「輪郭は、出したくないんです…女の子っぽくないから」
「…そうか、すまないね」

そういった些細なことが楽しい、と思える。
もっと色々な話を聞かせて欲しい。
聞きたいこと、全てを聞くには夜は短すぎた。

それから彼、かつ彼女とわたしとは以前よりこまめに会うことになる。


                       おしまい。

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