〜〜調律師と庭師の恋〜〜 9,堕ちる

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668 : ◆PICorehgzw [sage]:2008/08/16(土) 01:23:13.38 ID:unCe62Io
調律師と庭師の恋

A・すいーつ
B・ほのぼの
C・せつない
D・くらい
E・びっち


682 : ◆PICorehgzw [sage]:2008/08/16(土) 01:48:35.59 ID:unCe62Io
〜〜調律師と庭師の恋〜〜

-前回までのあらすじ-

悟飯の屋敷で開催された夕涼みの夜会。
あまり人の多い集まりは好まぬ調律師だったが、
庭師が丹精込めて育てたばらの花に惹かれたのもあり、
参加することにした。

そこに参加していたとある金持ちの男。
学者悟飯の案を事業に利用するつもりだと語る男は、
不躾な視線を調律師に送る。

邪険にすることも出来ず、男に促されるまま
暗い庭に面したテラスへと二人は移動した。

688 : ◆PICorehgzw [sage]:2008/08/16(土) 02:00:21.48 ID:unCe62Io
>>678 E・びっち

いかにも高級そうなスーツも、きちんと撫で付けられた白髪の目立つ髪の毛も、
口元に蓄えられた豊かなひげも、
その男にすばらしい貫禄を与えていたはずだった。
それなのに調律師から見たその男は、ひどく下卑た存在に思える。

口元に張り付いたいやらしい笑いのせいだろうか。
妙に濁った目付きのせいだろうか。
男が一歩踏み出し、調律師が一歩後ずさる。

とつん、と、調律師の、しなやかな腰にテラスの柵が当たる。

金持ちの男「逃げようとしなくても良いだろう、それとも」
金持ちの男「わしが嫌いかな?出来損ないの調律師さん」
ピッコロ「……キライも何もオレはあなたを知らない」

できそこない。
その言葉に耳の奥がつきんと痛み、ピッコロの表情に険がにじむ。


690 : ◆PICorehgzw [sage]:2008/08/16(土) 02:12:20.16 ID:unCe62Io
男は楽しそうに笑っている。
カーテン越しに広間から零れる灯りが顔の陰影を濃くし、
男のそれは醜悪と言っても良いようだった。

金持ちの男「……ウワサは本当かね」
ピッコロ「手袋の上からでもわかるだろう」

そんな話がしたいのか、と。
ピッコロは僅かに表情を歪めると、男の前に片手を差し出して見せる。
レースから緑の肌を透けさせた、その指の数は、足りない。
ピアノが弾けない出来損ないの手。

だが金持ちの男は、ふん、と、鼻で笑う。

金持ちの男「そちらではない」


691 : ◆PICorehgzw [sage]:2008/08/16(土) 02:16:59.03 ID:unCe62Io
男の手がピッコロの手首を掴んだ。
ぎり、と。
生活に不自由しない初老近い男の手とは思えないほど強く。

ピッコロ「う、」

痛みに身を竦めるピッコロが、痛みのせいではなく目を見開いた。
男が空いた手で、
ピッコロが身に纏っているすべすべとしたドレスをたくし上げ始める。

ピッコロ「  な」

調律師の背筋がこわばる。
なめらかな布地が、ストッキング越しに足を撫で上げてゆく。


694 : ◆PICorehgzw [sage]:2008/08/16(土) 02:21:14.39 ID:unCe62Io
ピッコロ「よせ」

調律師の声が低くかすれる。
薄いカーテンはよく透けている。
明るい広間で人々が蠢く影がよく見える。
こんなところで一体何を。

金持ちの男「ウワサが本当なのか、気になってねえ」
ピッコロ「……ッ、」

なんの、とは、聞けなかった。
こうまでされてわからぬはずがない。

ピッコロ「…………っく、ぅ」


695 : ◆PICorehgzw [sage]:2008/08/16(土) 02:28:06.61 ID:unCe62Io
零れた声は羞恥と怒りを耐える呻き。
けっして官能のそれではなかった。

太くずんぐりと短い男の指が、
たくし上げられたドレスの下に消えている。
金をかけたスーツの下で男の腕が蠢くたびに、
調律師のしなやかな背筋がドレスに隠れて震え、
捉えられたままの手首が戦慄いた。


700 : ◆PICorehgzw [sage]:2008/08/16(土) 02:35:09.52 ID:unCe62Io
よせ、と、囁くように掠れた声で訴えるピッコロの喉が、
男の指がドレスの中で蠢くたびに引き攣って消える。
縋る先を探すように彷徨っていた、
捉えられていないほうの手がテラスの柵を掴み、
怯えたように強張って己の意思のまま動かぬ体を支えた。

金持ちの男「……ウワサ通り、こっちも欠陥品か」

触れられている箇所から胸まで、
逆棘だらけの木の杭が打ち込まれたように痛む。
息苦しい。

ピッコロ「  ああッ」

大きな声が、いいや、悲鳴が漏れる。
それから調律師は慌てて唇を噛んだ。
広間に聞こえてしまったら。


704 : ◆PICorehgzw [sage]:2008/08/16(土) 02:44:19.03 ID:unCe62Io
それは官能の叫びではない。
思い切り立てられた爪が、ぷくりと柔らかなその部分を傷つけ、
じわと血が滲む。
ひとのものではない紫色の。

金持ちの男「肉袋にもなれんただの肉塊か」
ピッコロ「……っ」

痛み、よりも、違う何か激しい感情に体が震える。
怒りにしては悲しすぎる。悔しさにしては冷たすぎる。
傷つけられたその部分がじくじくと痛み、熱い。
だが体の芯はまるでピッコロの心のように冷え切っている。

ようやくドレスの下から腕が引き抜かれると、
覗いていた足がふわりと音もなく布で包みなおされる。

金持ちの男「だが、ウワサがここまで本当ならば」
金持ちの男「上の穴はいい具合というのも本当かも知れんな」


707 : ◆PICorehgzw [sage]:2008/08/16(土) 02:52:37.06 ID:unCe62Io
ピッコロは切迫していた。
がくがくと体が震える。止められない。
目の前の男の体を押し退けて、
引き止められたとしてもせめて広間まで逃げればそれで良いのだ。
だが体が動かない。動けない。
ただただ追い詰められた少女のように身を小さく硬く縮めていた。

ピッコロ「 ッ あ、ふ」
金持ちの男「指が汚れた、きれいにしろ」

かたかたと聞こえないほどに鳴っていた歯列を割って、
太い指が押し込まれる。
己の血の味。
それを口内に塗りこまれる。

体が冷たい。足の間が熱い。
だれか、
だれか。


710 : ◆PICorehgzw [sage]:2008/08/16(土) 02:57:57.88 ID:unCe62Io


A・ボスケテ
B・助けは来ない。 現実は非情である。
C・殺っちゃえ!


717 : ◆PICorehgzw [sage]:2008/08/16(土) 03:09:59.77 ID:unCe62Io
>>712 めっちゃCやりたいA

グチュ、グチュ。
舌を指で捏ねられ、己の血の匂いが鼻腔を擽る。
ねちねちと指先が上あごを撫でまわし、舌の裏奥を掘るように抉る。
くふ、かは、と零れるピッコロの吐息に甘さはない。
見開かれたままの目、まぶたがぶるぶると震え、
その常は強い眼差しを産む目に陰が差す。
己の歯列に舌を押し付けるように押され、摩擦され、
豊かな唾液がとぷとぷと溢れて男の手首と己のあごを濡らす。

ピッコロは切迫していた。
背筋は強張りきって最早震える余裕すらない。
テラスの床を踏み締めた足の感覚が見つからない。
頭の奥にちらちらといやなシルエットが差す。

やめろ、やめてくれ。

だがピッコロの体は思うように動かない。
短く太い男の指が、ぐりぐりと舌を痛めつける。
ツメを押し付けられ、痛みに声を漏らす。

媚びた気配のひとかけらすらないその声に、
男はいたく満足そうに笑う。


719 : ◆PICorehgzw [sage]:2008/08/16(土) 03:23:49.80 ID:unCe62Io
抵抗を示せぬピッコロの、
舌ごと顎を掴むようにして顔を引き下ろさせる。
強張りきった体はぎこちなく折れ、
男はそのピッコロの口を大きく指で割り、開かせて覗き込む。
闇に大分慣れてきた目に、広間から零れる光をぬらりてらりといやらしく反射させながら
たっぷりと濡れたピッコロの口が映し出された。

金持ちの男「なるほどねぇ」

楽しげな男の声。

金持ちの男「咥えるしか能がないだけあって、具合の良さそうな口だ」

男の指が増える。唇を押し広げられ、粘液の擦れる音を響かせながら、
太いそれが粘膜を嬲った。
調律師の顎がわななく。噛み切ってしまいたい、だが、出来ない。
してはいけないのだ、
オレにそんな資格はない。

繰り返し言い聞かされた言葉が脳裏を巡る。


720 : ◆PICorehgzw [sage]:2008/08/16(土) 03:27:46.90 ID:unCe62Io
快感はない。官能を持たぬ体。
どこまでも欠陥品。

欠陥、

いらないもの、ひつようのないもの。
足りぬ指。


ふわり、と、
調律師の鼻先にあまやかな香りが漂う。
ねっとりと身に纏わり着く夜気を揺らす、
風に乗せられたばらの香り。


721 : ◆PICorehgzw [sage]:2008/08/16(土) 03:36:14.12 ID:unCe62Io
あいつがオレのこんな姿を見たらどう思うのだろうか。

ピッコロ「くふっ」

にちゅりと粘着質な音を立てて男の指が口腔を歪ませる。
なすりつけられ、粘膜を引っかかれ、
違和感と痛みと嫌悪と不快ばかりだ。
それなのに調律師は振り払うことができない。

あいつがオレのこんな姿を見たら。
花を、庭木ばかりを見て、緑を、華やかな色ばかりを愛し、
植物を育む指を持つあいつが、

舌の付け根を指で荒らされる。
痛み、嫌悪。
なのに溢れ出る唾液がぽつりぽつりとテラスの床を濡らす。


722 : ◆PICorehgzw [sage]:2008/08/16(土) 03:48:36.00 ID:unCe62Io


(中略)


ピッコロ「…………、」

意識が浮上する。まぶたを開ける前に明るさを感じた。
ぐ、と一度強めにまぶたに力を入れてから、覚悟を決めて目を開く。
己の寝室ではない部屋。
ピッコロはこの部屋をよく知っていた。
あの頃のままの調度品に苦笑しながら、ゆっくりと体を起こす。

きゅうくつなドレスを脱ぎ捨てたままベッドに倒れ込んでしまったらしい。
ストッキングとガーターのみを身につけた姿で、
ピッコロはベッドから降りると窓へ向かった。
カーテンを端に寄せ、窓を開く。

暑いのであろう外気が肌を撫でた。
青い空。
なんの迷いも憂いもないかのような夏の日差し。


725 : ◆PICorehgzw [sage]:2008/08/16(土) 04:00:23.24 ID:unCe62Io
じりじりと肌を焦がすような陽射しを浴びていれば、
昨夜、賑わう広間のすぐ傍のテラスの闇の中で、
引き戻されかけた深い沼が幻だったかのように感じる。

ピッコロ「まぶ、しい……」

二階のその部屋はピッコロが悟飯の屋敷で暮らしていた短い期間、
自室として使っていた部屋だった。
あの頃はこの眺めをどうとも思っていなかった。

つやつやと元気を発散するように、夏の空気の中深呼吸している植物たち。
この庭の片隅、テラスの暗がりで、オレは……。

同じ庭で、
重そうな土袋を肩に担いで、のそのそと地べたを這い回るように庭師が働いていた。
調律師はいつまでもそれを飽かずに眺めていた、
この屋敷の主人が、パーティーの途中に具合を悪くした
元家庭教師の様子を伺うために扉をノックする時まで。


                          続く・・・。

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