調律師「そのつぼみは、取り去ってしまうのか」
庭師「そうでがす。……いっぺえつぼみがついとると、」
庭師「えいようが行き渡らんこつなって、」
庭師「きれえな花が咲かんとでがす」
調律師「……そう、か」
調律師「うつくしい花を咲かせるために、」
調律師「出来損ないの花は、間引かれてしまうのだな」
812 ◆PICorehgzw [sage] Date:2008/08/06(水) 20:14:20.43 ID:V.mp9too Be:
庭師「それは違うでがすよ」
調律師「……何がだ」
庭師「このつぼみも、このつぼみも、てっぺんのつぼみも、この株の花でがす」
調律師「?」
庭師「ぜんぶがぜんぶで、この花でがす」
調律師「……」
庭師「この花がきれーく、きれーくなるために、」
庭師「おんなの、おんなの、 女性のひとが、」
庭師「おけしょうや減量をするがこつ、」
庭師「きれーくなるよう、一緒に努力してやるんでがす」
調律師「……」
庭師「このつぼみは、てっぺんのつぼみんがためにちぎられるんじゃないでがす」
庭師「このつぼみもてっぺんのつぼみも全部でお花でがすから」
庭師「自分のために、で、」
庭師「ううん……」
庭師「俺はあたまがあほうでがすから、どう言えばいいのか解らんでがす」
813 ◆PICorehgzw [sage] Date:2008/08/06(水) 20:15:09.78 ID:V.mp9too Be:
調律師「……いや。解った気が、する」
庭師「そうでがすか!」
調律師「フフ。お前がそんなに話すだなんて、」
調律師「めずらしい……」
庭師「そう……、でがすね」
調律師「お前はよほど花が好きなのだな」
814 ◆PICorehgzw [sage] Date:2008/08/06(水) 20:16:26.95 ID:V.mp9too Be:
花よりずっと、あなたのことが。
庭師はもちろんそんなことを言う勇気どころか、
そんな言葉を思いつくことすら出来ない。
柔らかな笑いを微かに口元に浮かべた調律師を、
盗み見るように見詰めながら、
ぎゅうぎゅう絞られるようにうねる胸がどうやれば治まるのか、
見当もつかずにただ困っていた。
おしまい。