天使のみた夢

348 ◆hAmnyPalgs [sage] Date:2008/07/28(月) 21:45:11.92 ID:HZ1xsMMo Be:
>>338 B・ヘビィに

オレはいつも通りあいつの部屋で待っていた。
あいつがドアを開けてこの部屋に入ってくるまでオレには何もやることがない。
羽をつくろい、あとはぼんやりとただ待っている。
窓にはカギが掛かっていない。
ドアもオレが開けようと思えばいつでも開くことが出来る。
だがオレはずっとこの部屋で待っていた。

351 ◆hAmnyPalgs [sage] Date:2008/07/28(月) 21:54:02.90 ID:HZ1xsMMo Be:
多分それはオレの意思だと思うが、
本当にそうなのかは解らない。
オレたちがどれだけの自我を許されているのか、
解らない。

ただ待っていた。
ぐにゃりと歪んだ時計の針では
今が何時だか解らない。
何時かだなんて空の上で暮らしていた頃は気にしたこともなかった。

空の上にいたころは暇になれば人間を見ていた。
あいつを見ていた。

この部屋からは見ることが出来ない。
待つしかない。

だがあいつが帰ってくれば、誰より傍で見ていられる。


352 ◆hAmnyPalgs [sage] Date:2008/07/28(月) 21:56:06.97 ID:HZ1xsMMo Be:
「ピッコロさん、いつまで待つつもりですか」

オレより高い声がする。
振り向けばデンデが、
食べ物を与えられずに死んでいくかわいそうな生き物を見るような目で
オレを見ていた。

ふしぎなことを聞くやつだ。
オレが待っているのはあいつだ。
あいつが帰って来るのを待っているのだから
あいつが帰って来るまで待つの決まっている。


353 ◆hAmnyPalgs [sage] Date:2008/07/28(月) 21:57:56.29 ID:HZ1xsMMo Be:
そう伝えると、デンデがオレに手を伸ばした。
頭を撫でられる。
デンデはオレにこんなことをするやつじゃないのに、
あいつがオレを撫でているのを見ていたんだろうか。

「いつまで待つんですか」

また問われる。
あいつが帰って来るまでだ。


354 ◆hAmnyPalgs [sage] Date:2008/07/28(月) 22:00:35.04 ID:HZ1xsMMo Be:
「天界に帰りましょうよ」

デンデの手は少しあいつより小さいような気がした。
頭に触れていた手を引くと、
デンデはその手を着ている服で拭う。
オレは汚いから仕方がない。

「もうあの人は帰ってきませんよ」

おかしなことをいうやつだ。
あいつはこの部屋に帰って来る。


355 ◆hAmnyPalgs [sage] Date:2008/07/28(月) 22:04:38.87 ID:HZ1xsMMo Be:
「あの人はあなたに待っていて欲しいとは思っていませんよ」

デンデはオレをかわいそうなやつだと思っている。
だがオレはあいつがこの部屋に帰って来ると知っているから、
なんでもない。
お前には解らないんだと告げた。

「あの人はもうあなたを必要とはしていません」

バカなことを言うやつだ。
必要としていないわけがない、
オレが不要ならオレはあいつのそばには

「あの人はもう、帰ってきませんよ」

そんなはずがない。


358 ◆hAmnyPalgs [sage] Date:2008/07/28(月) 22:07:36.25 ID:HZ1xsMMo Be:
なんだかデンデの存在が不快になる。
デンデから視線を背けて、
見慣れたこの部屋の壁を見た。

「あの人はもう」

うるさい。

「だってあの人はもういませんから」


359 ◆hAmnyPalgs [sage] Date:2008/07/28(月) 22:10:14.93 ID:HZ1xsMMo Be:





「あなたに待っていて欲しいと思っているあの人はもういません」

あいつはもうすぐ帰って来る。
オレはそれを待たなければいけない。

「あなたが思っているあの人はもういません」





「ねえ、そうでしょう?」
「そうだな」


360 ◆hAmnyPalgs [sage] Date:2008/07/28(月) 22:12:19.42 ID:HZ1xsMMo Be:


おかえり、
ほら見ろ、帰って来たじゃないか。
声のする方を振り返る。


363 ◆hAmnyPalgs [sage] Date:2008/07/28(月) 22:17:25.02 ID:HZ1xsMMo Be:
「ピッコロさん、帰りましょう」

デンデだけがそこにいた。
そうか、あいつはもういないのか。
オレはここであいつを待っていたが、
あいつはもういなくなっていたのか。

ここに帰って来るあいつがもういないんだな。


「さ、帰りましょう」

オレを見下ろしていたデンデがオレを見上げて、
窓の向こうに消えた。
黄土色の空に飛び立っていくデンデのつばさはとてもきれいだ。
オレもまたそうしようとして、
デンデが潜り抜けた窓がオレには潜り抜けられないことを知る。


364 ◆hAmnyPalgs [sage] Date:2008/07/28(月) 22:22:39.61 ID:HZ1xsMMo Be:
デンデ、オレはそちらへは行けない。
デンデは少し残念そうにオレを振り返って、見下ろした。
窓ガラス越しに見上げたデンデは溜息をつく。
重い溜息。

「ピッコロさんはカギが掛かっていない窓にもカギを掛けてしまうんですね」

でももしかしたらあいつがオレを必要としているから、
この窓は開かないのかも知れない。
それならばオレはやはりここであいつを待っていてやらなければ。

「その窓にカギを掛けたのはあの人ではなくピッコロさんですよ」
「あの人はもういません。帰ってきません。あなたを必要としていません」
「ねえ、そうですよね」
「そうだな」

振り返る。
誰もいない。


365 ◆hAmnyPalgs [sage] Date:2008/07/28(月) 22:27:51.42 ID:HZ1xsMMo Be:
もう一度窓の外を見るとデンデはまだそこでオレを見下ろしていた。
それではやはりオレはそちらに行くべきなのだろう。

「窓を開けてあげましょうか」


366 ◆hAmnyPalgs [sage] Date:2008/07/28(月) 22:28:25.29 ID:HZ1xsMMo Be:
A・オレは頷いた。
B・オレは黙って窓から離れた。


370 ◆hAmnyPalgs [sage] Date:2008/07/28(月) 22:35:39.59 ID:HZ1xsMMo Be:
>>367 C・わかってるけどどうしようもないよ

「あの人がもう帰ってこないことは解りましたか」

そうか。
もう帰ってこないんだな。
オレを撫でてくれないのだな。

だが窓が開かないからオレはそちらへはいけないんだ。

「開けてあげましょうか」

お前に頼めば窓を開けてもらえるのだろうか、
だが、
オレはこの部屋にいなくてはいけないような気がする。

「もう、あの人は帰ってこないのに?」

…………。


371 ◆hAmnyPalgs [sage] Date:2008/07/28(月) 22:39:12.67 ID:HZ1xsMMo Be:
オレを必要としているあいつはもういないのか。

「そうですよ、解ったでしょう」

だが、窓が開かない。

「開けてあげましょうか」

そうか、開けてもらえばいいのかもしれない。
だが、
どう言えばそれが伝わるのか解らない。
どう伝えれば開けてもらえるのか、

開けてもらっていいのだろうか。


374 ◆hAmnyPalgs [sage] Date:2008/07/28(月) 22:47:34.85 ID:HZ1xsMMo Be:
あいつが帰ってこないのならばオレはどうしてこの部屋にいるのだろう。
時計を見た。
ぐにゃぐにゃとした針が指し示す数字が解らない。
どうしよう。
あいつが帰ってこないと、確かに解る何かが欲しい。
時間でも、言葉でも。

あいつがいるような気がした。

振り返る。
誰もいない。


375 ◆hAmnyPalgs [sage] Date:2008/07/28(月) 22:48:57.12 ID:HZ1xsMMo Be:
開けてもらおう、と思った。
時計の針から窓の外に視線を移す。
デンデがそこにはいない。
黄土色の空がきらきらと輝いていた。

オレが迷っているうちにオレを見捨てることにしたのか。
仕方がない。
オレは汚いから、迎えに来てくれようとしただけでありがたい。


376 ◆hAmnyPalgs [sage] Date:2008/07/28(月) 22:51:35.18 ID:HZ1xsMMo Be:
デンデが窓を開けてくれないのなら、
オレはもうこの部屋から出ることは出来ない。

空の上に帰ることが出来ない。





あいつが帰ってこないのならば、
オレはずっと1人きりだ。





ずっと1人きりでいたらオレもあの男のようにいつか歪むのだろうか。
だがオレは
窓もドアも開けることが出来ない。
外に出ることが出来ないから、
誰かを傷つける心配はない。

それならこれでいい。

オレを必要としているあいつがいないのならば、
これでいい。

あいつがそれでいいのならオレは1人でいい。







ひどくのどが渇いた。

381 ◆hAmnyPalgs [sage] Date:2008/07/28(月) 22:57:22.15 ID:HZ1xsMMo Be:
台所に立つ。
少し歪んだ金属の光。
冷蔵庫の中にオレのための水がある気がするが、
もしなかったらオレはだめになってしまうような気がしたので、
水道の蛇口を捻った。

黄土色の水が流れ出す。
それを片手で受けて、口を近づけた。


383 ◆hAmnyPalgs [sage] Date:2008/07/28(月) 22:58:51.47 ID:HZ1xsMMo Be:
味はしない。
口に含んで、飲み込もうとしたが、
水が飲み込めない。

ずっと口の中に入れていると、
あの男の味がした。


384 ◆hAmnyPalgs [sage] Date:2008/07/28(月) 23:01:52.30 ID:HZ1xsMMo Be:
えずく。
口の中のものを全部吐き出すと、
シンクが白く汚れた。
蛇口から溢れ出す黄土色の水がそれを流していくのを見守る。
オレはどうやれば洗えるのだろう。


386 ◆hAmnyPalgs [sage] Date:2008/07/28(月) 23:06:00.07 ID:HZ1xsMMo Be:
体を裏返しにして全部洗ってしまいたいんだが、どうしたらいい?

「そのようにしたらいい」

そうか。
だがあいつがもう帰ってこないのならば、
このままでも構わない。

座った。
つばさを引き寄せて、つくろう。
そういえばあいつはオレの羽を気に入っていた。
オレは余り触られるのはいやだったが、きらいじゃなかった。


387 ◆hAmnyPalgs [sage] Date:2008/07/28(月) 23:06:40.08 ID:HZ1xsMMo Be:
つばさをきれいにしても、
オレはもう飛ばないし、
あいつはもうオレのはねに触れない。



はねをつくろうのを止めた。

それがなければオレはもう何もすることがない。
このままここで乾くのを1人待つのか。
誰もオレに何も望まない。


392 ◆hAmnyPalgs [sage] Date:2008/07/28(月) 23:13:18.79 ID:HZ1xsMMo Be:
どこへもいけない。

時計を見た。
あの数字を越えればあいつがそろそろ帰ってくるという
シンボルを探したが
針も数字もオレには読めなかった。

あいつがもう帰ってこない証拠なのかも知れないが、
解らない。

ちゃぶだいにつっぷした。


「死を祈って欲しいのか」

そうなのかも知れない。


393 ◆hAmnyPalgs [sage] Date:2008/07/28(月) 23:14:30.63 ID:HZ1xsMMo Be:
「お前はいつもそうだ」

うるさい。

「祈りや願いを自分から求めてどうする」

わかっている。
だまれ。

「私たちはただここにあればいいのだ」

しっている。

「何も考えるな」

顔を上げた。
ネイルがオレを呆れたような目付きで見下ろしている。


395 ◆hAmnyPalgs [sage] Date:2008/07/28(月) 23:16:08.05 ID:HZ1xsMMo Be:
オレは考えたい。
あいつがオレをどう思っているか、
オレに何を望んでいるか、
オレはあいつをどう思っているか、
考えたい。

「何も考えるな」

出来損ないを見るようなネイルを、
睨もうとしたが、
ネイルの顔を見ることが出来ない。
視線が、
首から上に上がらない。

だが、ネイルが、
オレを見る顔つきや目付きはわかる。


397 ◆hAmnyPalgs [sage] Date:2008/07/28(月) 23:18:12.24 ID:HZ1xsMMo Be:
お前は窓を開けてくれるのか。

「開けたいのか」

……。

「窓を開けたいのか。それはお前の意思なのか」

わからない。
わからないがそうしなければいけないのだと思う。

だがオレには開けられないんだ。

「開けたくないのか」

わからない。
視線を外せばきっとお前もいなくなるのだろう、
オレは1人なのだから。


398 ◆hAmnyPalgs [sage] Date:2008/07/28(月) 23:20:04.96 ID:HZ1xsMMo Be:
「窓を開けず、ずっとここにいたいのか」

……。

「誰にも祈られず願われず求められず1人でここにいたいのか」

……。

「だが」

「どちらにせよもうお前に祈るニンゲンは、いないよ」

きっとそうだ。


399 ◆hAmnyPalgs [sage] Date:2008/07/28(月) 23:21:14.30 ID:HZ1xsMMo Be:
強く目を閉じた。
ネイルの声が薄らいでいく。
もう何を言われているのかが解らない。
お前のいうことはいつもただしかった、
だが、
オレは間違っていることでも考えたいんだ。


強く閉じた目がいたい。まぶたがあつい。
めのたまのつけねが、じんじんとした。


400 ◆hAmnyPalgs [sage] Date:2008/07/28(月) 23:23:26.90 ID:HZ1xsMMo Be:
「ピッコロさん」

やさしい声がした。
だが、
きっと、目を開けても誰もいない。


401 ◆hAmnyPalgs [sage] Date:2008/07/28(月) 23:24:45.58 ID:HZ1xsMMo Be:
「ピッコロさん」

あいつの声がする。
だが、
まぶたを開けてそこにあいつがいなければ
オレはだめになってしまうような気がしたので、

ただまぶたを閉じて身を硬くしていた。

「ピッコロさん」


                     おしまい。




つづきます。
21 : 45 : 34 | 天使のお話 | page top↑
| ホーム |

プロフィール

Author:picoma
VIPに投稿された「ピッコロと俺の結婚生活」から派生したお話のまとめサイトです。
簡単な解説はカテゴリの説明にて。

お話を連続して読むためだけの目的で作成していますので、途中のレスなどは省かれています。
現行スレへのリンクは、混乱を避けるためしておりません。コメント・トラバも受け付けておりません。ご了承下さい。
リンクは基本辞退させていただきます。

過去ログはカテゴリの一番上からご覧になれます。

ご用のある方はメールフォームをご利用ください。

最新記事

月別アーカイブ

カレンダー

10 | 2009/11 | 12
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 - - - - -

カテゴリ

リンク

検索フォーム