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〜〜調律師と庭師の恋〜〜 1,始まり2:
〜〜調教師と庭師の恋〜〜 2,再会3:
〜〜調律師と庭師の恋〜〜 3,調律師の家へ4:
〜〜調律師と庭師の恋〜〜 4,家での出来事293 ◆hAmnyPalgs [sage] Date:2008/07/11(金) 01:33:12.13 ID:4YWiJ9so Be:
〜〜調律師と庭師の恋〜〜
-これまでのあらすじ-
調律師の庭に植えた花の世話をするかわりに、
ピアノを聴かせて欲しいと願う庭師に、調律師は笑顔で応じてくれました。
けれどやはり庭師はみすぼらしい、生まれも育ちも芳しくない人間で、
調律師は上流階級とも交流のある上品な人でした。
そんなある日開かれた七夕の集まりで、見た目を笑われた庭師を、
調律師だけが皆の前でかばってくれたのです。
つりあわないことは庭師もようく解っています、それでも庭師は今日も
調律師のことを思い、その家に通うのでした。
295 ◆hAmnyPalgs [sage] Date:2008/07/11(金) 01:45:12.76 ID:4YWiJ9so Be:
庭師は今日も、町の外れにひっそりとある小さな、
それでも品のよさを感じさせる調律師の家の庭先に屈み込んでる。
丁寧に虫を指で毟り、不必要な葉を取り、
家の中にあの人はいるのだろうかと作業しながらも庭師の意識は離れがちだ。
ピッコロ「お前、」
突然声を掛けられ、びくりと肩を弾ませた庭師が立ち上がる。
振り返れば大きな窓の桟に手を付いて乗り出す調律師の姿。
ピッコロ「来ていたのか、いつもすまんな」
俺「い、いや、これくらいなんでもないでがす」
ピッコロ「声を掛けてくれば良いのに、……聴くだろう?」
俺「も、申し訳ないでがす、その」
ピッコロ「はは、それじゃあ今日は何を弾こうか」
俺「お、俺はおんがくちいとも解らんでがす」
ピッコロ「今日もオレが決めていいか?」
俺「は、はい」
300 ◆hAmnyPalgs [sage] Date:2008/07/11(金) 01:56:25.11 ID:4YWiJ9so Be:
かっかと照りつける黄色い日差しの中で、
調律師はまぶしげに少し目を細め、
ひらりと窓の中に消えてしまう。
立ち上がればその向こうでピアノの蓋を開けるその人が見えるのだろうが、
庭師は熱されたじべたにじっとしゃがみ込んだまま、
窓から引き剥がすように目を背けた。
ほどなく聞こえてくるピアノの調べ。
優しい音色に庭師は切なそうにひとつ溜息をついた。
切ない、なんて感情を庭師は理解出来ない。
余り難しいことを考えないように考えないように、
手先と体だけ使って生きてきた男は、
どんな風にこの感情を言い表せばいいのかも解らない。
ただ、この人のために、何か出来ることが
とてもとても嬉しいことだということは、解る。
庭師は手を動かした。
自分に出来ることがあって、ほんとうに嬉しい、と思いながら。
306 ◆hAmnyPalgs [sage] Date:2008/07/11(金) 02:11:25.68 ID:4YWiJ9so Be:
俺「……」
作業が終わり、帰る前に庭師は恐る恐ると窓に近づく。
平たいピアノの前で目を閉じ、
指を鍵盤に躍らせる調律師の姿。
鍵盤に指を押し当てる度に僅かに揺れる体。
終わった、と声を掛けてその光景を失うことが怖い。
庭師はぐしゃぐしゃと手の中で帽子を歪ませる。
ピッコロ「む」
俺「!」
ピッコロ「終わったのか」
俺「へえ…は、はい、終わったでがす」
ピッコロ「いつもすまんな」
俺「……お、」
ピッコロ「?」
俺「俺がしたくてしてることで、がす、から」
ピッコロ「フフ」
310 ◆hAmnyPalgs [sage] Date:2008/07/11(金) 02:19:23.66 ID:4YWiJ9so Be:
ピッコロ「何か飲んでいくか」
俺「い、いえ、」
ピッコロ「遠慮するな、……客なぞ来ない家だ、」
ピッコロ「たまには客用のグラスも使われたがっている」
俺「で、でがすが、」
ピッコロ「……」
黙って椅子から立ち上がり、僅かな衣ズレの音を残して
部屋から消える調律師。
庭師はどうしたらいいのか解らなくて、
暑さだけではなく滲む汗を乱暴に袖で拭う。
キィ、と、軽やかな音と共にドアが開いた。
ピッコロ「入れ」
長身が開いたドアから覗き、笑みだとわかる程度に口元を綻ばせ
庭師を呼ぶ。
逆らえるわけがなかった。
312 ◆hAmnyPalgs [sage] Date:2008/07/11(金) 02:32:58.51 ID:4YWiJ9so Be:
ピッコロ「……さ、飲め」
俺「え」
差し出されたグラスの中に入っていたのは、
深い琥珀色の飲み物。
俺「これは」
ピッコロ「麦茶だ、……人間はこれが好きだろう?」
俺「へ、へえ、その、」
ピッコロ「初めて煎じたからおかしいかも知れないが」
俺「……せんせいが、」
ピッコロ「ああ」
グラスを持つ手が震えてしまう。
陽射しに照り付けられた外にいるよりもなお暑い、と思った。
庭師はただただ、憧れる調律師が手ずから煎じた茶を飲めると
それだけが嬉しかった。
客の訪れぬこの家、水しか飲まない調律師だけが住むこの家。
調律師が、炒り麦を庭師のために購入したことに気付かない。
つづく
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