ピッコロ「これで良いだろう」
悟飯「いつもながら手早いですね。ビーデル、弾いてごらん」
ビーデル「ええ」
ビーデル、ピアノから離れるピッコロと入れ違いにピアノへと。
柔らかな臀部が黒い椅子にゆっくりと下ろされる。
踊るように鍵盤を叩く指先によって生み出される旋律に濁りはない。
ピッコロ「良いようだな」
悟飯「いつもありがとうございます」
ピッコロ「いや、仕事だからな。では失礼する」
ピッコロ、一礼して退場。
ビーデルが奏でる練習曲を背なに受けつつ庭へ。
669 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage] Date:2008/06/10(火) 19:25:27.69 ID:dMAeP7go Be:
館から聞こえてくる楽しげな音に、僅かに笑みを浮かべながら歩むピッコロ。
真っ直ぐな背中を強調するように背後からカメラ舐めるように正面へ。
俺「うわっ」
ピッコロ「…?お前は?」
俺「へえ、こちらにお仕えしている庭師でがす」
ピッコロ、庭師と出くわす。
ぶつかりはしなかったものの用具を地面にぶちまける庭師。
大きな鋏や小さな鋏、小型ののこぎりが散らばる。
ピッコロ「ああ、すまない」
俺「うわあいけません、大事な指が痛んじまったらどう弁償したら良いか」
ピッコロ「うん?」
俺「これくらい自分で拾えるでがす」
ピッコロ、苦笑を漏らす。
ピッコロ「ピアニストとは違うさ。ほれ。…意外と重いんだな」
俺「ピアノの調律の先生でがしょ?」
ピッコロ「ああ、……弾くのが仕事じゃない」
俺「俺のようなもんには解らんでがす」
213 ◆hAmnyPalgs [sage] Date:2008/06/23(月) 11:38:13.91 ID:gOiRt0ko Be:
>>193,198 調律師と庭師の恋(ピッコロさん part8の668-669)
ずっしりと重い鋏がしなやかな指に捕らえられ、軽々と持ち上がる。
庭師はそれを心配げに見守っていたが、差し出されると恭しく受け取った。
俺「すまんこってす。お指大丈夫でがすか」
ピッコロ「フ。…指なぞ動けば良いんだ。ピアニストではないからな」
俺「俺のようなもんから見れぁ、どう違うかよう解らんでがす」
ピッコロ「…フン」
俺「よっくど見れぁ、本当にきれーか指でがす」
ピッコロ「……うまく鍵盤は叩けんがな」
俺「こちらの奥様にピアノを教えられたのは先生だぁ、ってば聞いたんでがすがねぇ」
四本しかない指を隠すように握り込むピッコロ。
さり気無く体の後ろに廻される腕の意味を庭師は解らない。
ピッコロ「ほんの、さわりだけだ」
俺「おかげさんで、仕事中ばきれーか音が聞けて俺ぁ幸せでがす」
214 ◆hAmnyPalgs [sage] Date:2008/06/23(月) 11:50:39.02 ID:gOiRt0ko Be:
庭先に届くピアノの音。
指鳴らしの練習曲から、技巧的ではないが優しく暖かみのある曲へと変わったそれ。
ピッコロの長い耳が音楽を意識し、ゆらりと揺れた。
ピッコロ「…ここの主人と親交があった由縁で、少しだけ奥方にピアノを勧めただけだ」
ピッコロ「オレでは、ろくに教えることも出来ん。奥方が興味を持たれてからは」
ピッコロ「きちんとした講師を呼ぶように言った、……」
ピッコロ「今お前が旋律を楽しむことが出来るのは」
ピッコロ「オレの『おかげ』ではない」
俺「むつかしいことはよう解らんでがす…」
がちゃがちゃと錆の浮いた箱の中に、ぶちまけた用具をしまいながら
首を傾げる庭師を見下ろし、フ、とピッコロは僅かに笑う。
217 ◆hAmnyPalgs [sage] Date:2008/06/23(月) 12:08:59.06 ID:gOiRt0ko Be:
ピッコロ「では、仕事、励めよ」
俺「あ」
傍を通り抜けるピッコロを追うように庭師は数歩歩き、
立ち止まる。
ふわりと香った花のような香り。
真っ直ぐに門へと向かうきりりとした後姿を見送る庭師。
庭師独白。
俺「楽器のことなんて、俺には解らんでがす」
俺「……俺に解るのは、」
俺「先生の指がきれーかごと」
俺「先生がお仕事ばしに訪れるたび」
俺「俺が先生の姿を探してばしまうごと」
続く・・・。
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