ほんとうに、ぼくのことだけが記憶から消えてしまったんだなぁ、と、実感してしまうことも少なくありません。
その度、記憶は新たに作りながら進めばいい、と679さんは言いますが
彼の記憶の消失を実感してしまう度、ぼくは寂しくなっちゃいます
679さんが傍にいて、声が聞けて、動いていてくれるだけで、満足なはずなのに…
679「神様」
デンデ「…679さん」
679「どうしたんですか、神様」
デンデ「…679さんからぼくについての記憶が消える前、いろんな事したんですよ」
679「はい、神様やミスター・ポポから聞きました」
デンデ「ほんとに、いろんなことが…たくさん…」
初めてのキス…お菓子を作ってみたり…下界に降りたり…
えっちなこともされたり…
頭の中をいろんな思い出が走り抜ける
もう、679さんは思い出してくれない、楽しかったり辛かったりした優しい思い出
667 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2008/06/30(月) 01:30:25.80 ID:pveHe.DO
679「…神様は、私との記憶を新たに作ることを望んでくれますか?」
デンデ「新たな…記憶?」
679「はい、神様はメモリーを新たに作りたく思ってくれますか?」
デンデ「そりゃあ…当たり前じゃないですか…」
『好きな人との間に、新たな思い出を作りたくない人なんかいませんよ』…と、続けようと思いましたが
ぼくの口はそれを続けませんでした
…だって、記憶が消えてからの679さんはどこか遠い感覚がして
本当に彼のことが好きなのか、ぼくはわからなくなっちゃってるんです
…
もしかしたら、ぼくは、もう…
679「それはよかった」
デンデ「へ?」
679「神様は、もしかしたら私を嫌いなのかと思いました」
デンデ「やだな、そんなワケないですよ!」
679さんが少しだけ笑う
…あれ?
この人、笑えましたっけ?
いつも難しい顔の無表情だったような…
デンデ「679さん?」
679「はい」
デンデ「…笑え…たんですね?」
679「はい、データ装置の修理等に伴い、表情系の一部改造も行っていただきました」
679「以前の私は、表情系データに異常があったらしく、感情に伴った表情を浮かべることがほぼ不可能でした」
668 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2008/06/30(月) 01:41:05.43 ID:pveHe.DO
デンデ「えっと…」
679「簡潔に述べますと、前回の定期検査時に、データ情報や回路がすべて検査されました」
679「その際、表情系回路の一部に傷が見つかり、その傷によって表情の大部分が損なわれていました」
デンデ「むぅ?」
679「それを修復したことにより、感情変化の電気信号にに正しい表情が伴うようになりました」
デンデ「はぁ」
…
良いことなのはわかりますが、なんだか複雑です
679さんが、ぼくの知ってる679さんじゃなくなっていくような…不思議な感覚
679さんは679さんなのに
679「それで神様」
デンデ「え?…あ、はい、なんですか?」
679「私も、神様と新たなメモリーを作ることを切望します」
デンデ「…」
今までは、まず見ることなんかできなかった、嬉しそうな顔
…その嬉しそうな顔に、違和感さえ感じてしまうぼくは
ぼくは…
670 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2008/06/30(月) 01:51:54.16 ID:pveHe.DO
679「嬉しいです、神様」
デンデ「…」
なにか、679さんが679さんである動かぬ証拠がほしかった
何か、証が
679「…神様?」
不思議そうな顔をして、腰を屈めてぼくをのぞき込む
その顔は当たり前のように679さんだけど、どこか679さんじゃない
デンデ「…679さんの、お部屋に行きたいです」
彼が日常を過ごすあの空間に行けば、何らかの証拠がつかめる
間違いなく、679さんが679さんである証が…
そんな気が、していました
679「しかし神様、今下界は…」
デンデ「連れていって?」
わがままを言っているのはわかってます
でも、679さんが679さんである確たる証を見つけるには、それしかないような気がしていました
それを見つけないと、不安なんです
いなかった一ヶ月の間に、彼はいろいろ変わりすぎていて…
671 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2008/06/30(月) 02:09:06.80 ID:pveHe.DO
679さんが、少し悩み込む
679「…わかりました、神様がそう望むなら下界へ行きましょう」
デンデ「はい、ワガママ言ってごめんなさい…」
『いえいえ』と、679さんが笑う
それに対し、やっぱりぼくは違和感を感じてしまう
けど、679さんはそのままぼくを抱き上げ、あの時と同じように天界の縁に立ち、青い空へと滑空する
…周りの風景や色など、いまはの目に入らなかった
一刻も早く、証を見つけたくて…
679「さ、下界です」
デンデ「あ…」
着いた下界は薄暗くて、今にも雨が降り出しそうな天気
…あの時と、同じ
679「雨が降り出すと、上がるまで天界に帰るのが困難になります」
デンデ「…」
679「雨が降り出す前に帰れれば良いですが…」
今にも降り出しそうな暗い空
鉛色の雲は、あの日と一緒
672 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2008/06/30(月) 02:21:52.07 ID:pveHe.DO
679「あ」
デンデ「え」
ぽつり、ぽつりとコンクリートに黒い斑点ができる
そして…
ザアァァァァ
一気に降り出す雨
もう、ぼくらが下界に降りるのを狙ってたんじゃないかーってぐらいのタイミングで降り出す雨
679「なんというタイミング…」
デンデ「…ほんとにですよ」
679「急ぎましょう、神様」
679さんがぼくを胸に抱え、雨の中を走り出す
あの日も、こうだったんでしょうか…
ぼくらが679さんの部屋に着いたのは、さんざん雨に降られて捨て猫のようになってからでした
679「ひどく降られました…」
デンデ「大丈夫ですか?」
679「私は大丈夫ですよ、それより神様が…」
いえいえ、ぼくもあなたも間違いなく頭の先から靴の中までびしょ濡れですから
どっちがよりひどいなんて事はないでしょう…
デンデ「うー…」
679「どうぞ」
濡れた服は身体に張り付き、気分が良くないです
679さんが差し出してくれたタオルで軽く水気を拭いながら、部屋へあがる
…
673 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2008/06/30(月) 02:29:38.42 ID:pveHe.DO
そこは、疑う余地もなく相変わらずでした
最低限の生活必需品しかないような、いや、最低限もないような殺風景な部屋
デンデ「…」
殺風景で、寂しい部屋なのに
ぼくは何ともいえない暖かな気持ちを感じていました
679「濡れたままでいると、風邪引きますよ」
679さんが、がしがしとぼくをタオルで拭く
その度聞こえてくる、かすかな機械音
…あぁ
ぼくは何を疑っていたんだろう
記憶がなくても、表情ができても、679さんはこんなに679さんじゃないですか
疑っていた自分が可笑しくて、思わずぼくは
デンデ「…くすくす」
679「?」
デンデ「…あははははっ」
あふれ出す笑いを、堪えられません
ぼくってばバカだなー
679さんの何を疑っていたんだろ
そんなぼくを679さんは、不思議そうに眺めているだけでした
679「神様?」
デンデ「あははは、ご、ごめんなさい…なんだか…あははははっ」
674 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2008/06/30(月) 02:41:19.86 ID:pveHe.DO
679「おいで、神様」
679さんが、ぼくを拭くのをやめて立ち上がる
そしてそのまま奥のドアに手をかけ、ぼくを手招く
デンデ「なんですか?」
679「神様は身体冷えてます、風邪を引かれては困ります、どうぞ」
開かれたドアの先は、真っ白いお風呂場
広いワケではないけど、そう狭いわけではない
これなら…
679「それでは」
デンデ「待って待って」
濡れた髪を邪魔くさそうに掻き上げながら立ち去ろうとしていた679さん
その濡れたシャツの端を掴み、呼び止める
679「なにか?」
デンデ「あの、一緒に…」
679「…」
デンデ「だ、だめですか?」
679さんが679さんだって、わかって
それが嬉しくて、なんだか離れたくなかったんです
680 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2008/06/30(月) 03:04:26.02 ID:pveHe.DO
679「…神様がそう望むなら」
デンデ「!…えへへ」
その返事にぼくは満足し、また笑いが溢れ出す
けどいつまでも笑っているわけには行かない
ずるり、と濡れた服を脱ぐと、身体が軽くなった気がしました
雨を吸って重たくなった服は、気分が良くないです…
679「服は洗濯機に入れておいてください、あとで洗って乾燥機かけます」
デンデ「はーい」
あ、そういえば
679さんの裸って初めて見ます
いままでえっちぃ事したりしても、脱ぐのはぼくだけで、679さんはボタン一つ外すこともなかったですから…
デンデ「…」
上半身だけ脱いだ679さんの身体は、細かったです
いや、悟空さん達と比べちゃいけませんよ!ぼく!
たぶん、地球の成人男性としては普通…だと思います
となると、気になるのは…まだ脱がれていない、ズボンの下…
679「神様?」
デンデ「え?あ、なんですか?」
679「いえ、すごく見られていたのでどうなさったのかと…」
681 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2008/06/30(月) 03:13:51.77 ID:pveHe.DO
デンデ「いえいえ、どうもしないですよ!」
679「?」
とりあえずぼくも脱ぎ、言われたとおり洗濯機に入れ、改めて679さんに視線を向ける
あ
デンデ「…」
679「どうしました?」
デンデ「あ、いえ…やっぱり付いてないんだなぁって…」
本来普通の男性なら性器がぶら下がっているであろうところは本当に何もなかったです
いえ、別に何かを期待していたワケじゃないですけど
679「あぁ、生殖器ですか?」
デンデ「!」
679「あれはアタッチメントパーツとして接続可能ですよ」
679「普段は思考的にも肉体的にも邪魔ですのでつけていません」
デンデ「邪魔…」
うーん
そういうモノなんでしょうか
679「神様」
デンデ「はい?」
679「おいで、風邪引きますよ」
679さんが浴室から手招きしてます
ほんと、動きの早い人だなぁ…
692 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2008/06/30(月) 03:38:49.40 ID:pveHe.DO
679「とりあえずこれでも着ててください」
デンデ「?はーい」
お風呂上がり、渡されたのは、679さんのであろう真白いワイシャツ
デンデ「…えへへ」
サイズは当然かなりおっきいです
でも、なんだか679さんに包まれてるみたいでちょっと幸せでした
679「ふむ」
デンデ「どうしました?」
679「いえ、可愛いなと思っただけです」
デンデ「!!」
〜♪〜〜♪
どこからか響く電子音
デンデ「?」
〜♪…ピッ、
679「はい、679です」
あぁ、電話ですか
ちょっとびっくりしました
693 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2008/06/30(月) 03:52:35.27 ID:pveHe.DO
679さんの顔つきが少し険しくなる
…お仕事関係でしょうか?
ピ
679「神様、すいません30分ほど出てきます」
679さんの手が、軽くぼくの頭をなでる
679「良い子にしててくださいね、神様」
デンデ「だいじょーぶですよー」
679「知らない人が来ても、玄関開けちゃダメですよ」
デンデ「わかってますよー」
679「勝手に外出ると戻れませんよ、ここオートロックですから」
デンデ「はいです」
679「えっと、それから…」
デンデ「急ぎの用なら、早く行った方が…」
679「…はい、あまり急ぎたくはないですが、急ぎの用です」
デンデ「?」
679「では神様、申し訳ありませんが留守番お願いしますね」
デンデ「はい、まっかせてください!」
679さんが、慌ただしく出てゆく
…何があったのか気になります、帰ってきてから聞いてみましょう
・・・つづく!
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