1スレ:
神とロボと『理解不能』 Vol.12スレ:
神とロボと『理解不能』 Vol.2285 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2008/06/28(土) 03:47:19.70 ID:WJnuF6DO
行かないでと、どんなに叫んでも彼は止まってくれない
振り向いてもくれない
ただ、普段通りのしっかりとした足取りで、ぼくを残して去ってしまう
彼を追いたいのに、脚がすくんで動いてくれない
待って、待って
お願い、待ってください
少しだけでいい
もう一度、あなたに触れさせて…
……
………
デンデ「…ん」
…夢、でしたか
ぼくは、また、あの日の夢を見てたみたいです
679さんがいなくなってから、一ヶ月が経ちました
その一ヶ月が長かったのか、短かったのかはわかりません
ただ、一ヶ月が経ちました
彼が今どうしているか、ぼくにはわかりません
神眼で見ようと思たりもしましたが
ぼくにはその勇気が、ありませんでした
デンデ「あー…」
うっかり、報告書をまとめながら眠ったりしたものだから
まとめ途中だった報告書には、ペンを引きずった跡やインク染みができていました
デンデ「やり直し…かぁ」
287 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2008/06/28(土) 03:56:43.30 ID:WJnuF6DO
引き出しの中から報告書用の紙をもう一枚出し、机に向かい直す
…
679さんが壊した執務室のドアは、そのままにしてあります
彼は責任感の強い人だったから、いつか、修理しに来てくれるような気がして、そのままです
ポポ「かみさま」
ドアがはずれたままの向こう側から、ポポさんがいつも通りの丸い目で、ぼくを見ていました
お水を持ってきてくれた訳ではないようです。
ポポ「お客様」
不思議でした
人の気を全く感じられません
けど、ポポさんがうそをつくわけもありません
デンデ「…?」
290 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2008/06/28(土) 04:10:01.56 ID:WJnuF6DO
ぼくを襲う、軽い既視感
これは…
あ、
遠いあの日の記憶
679さんと初めて会った、あの日
でも、彼はもう…
ぼくは、寂しさとやるせなさにため息をもらしていました
ポポ「かみさま」
デンデ「はーい、わかってますよー」
椅子から立ち上がり、外へでる
天界は今日も快晴です
そして、突然のお客様は、その青空を背に、まっすぐ立っていました
相変わらず、背中に鋼でも入っているんじゃないかーってぐらい、まっすぐに
デンデ「…!679さん…!」
間違うわけもありません
無表情をぶら下げて、彼はそこに立っていました
679「…やはり、神様は私をご存じなんですね?」
デンデ「え…だって、679さんじゃ…」
679「はい、No679-TypeL.O.S.Aが私の正式名称です」
あの日と、同じ言葉、同じ声
ぼくはまだ夢を見ているんでしょうか
291 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2008/06/28(土) 04:15:30.06 ID:WJnuF6DO
679「一ヶ月前、私は危険思考を持ちました」
デンデ「…」
679「私は私の判断で研究所に戻り、開発者に全てを話しました」
デンデ「…」
679「開発者は私を大切に扱ってくれます」
679「本来ならスクラップになってもおかしくない私を開発者は、容認しました」
デンデ「!!」
679「ただ一つ、ある条件と引き替えに」
294 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2008/06/28(土) 04:27:30.82 ID:WJnuF6DO
デンデ「その…条件って…なんですか?」
679さんが、少しだけうなづく
679「愛した人の情報を、オールクリアすることです」
デンデ「オール…クリア」
679「はい、メモリー上から、その危険思考を持つ要因になったと考えられる、私の愛した人の情報を」
679「全てデリートする事です」
デンデ「…」
頭の中が真っ白になる
どういう事か、理解できない
デンデ「えっと…」
679「一ヶ月前の私は、苦しみ、泣き、絶望しました」
デンデ「…」
679「忘れ去るぐらいなら、スクラップにしてくれと願いました」
デンデ「…」
679「しかし、私の願いは聞き入れられず。私のメモリーから愛した人の記録だけが消去されました」
デンデ「……」
679「簡潔に述べます」
679「私はそれを、思い出したいのです」
デンデ「…」
679「神様」
デンデ「…はい」
679「神ならば可能ではないかという仮説のもと、私はここまで来たのです」
297 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2008/06/28(土) 04:43:27.47 ID:WJnuF6DO
デンデ「その、あなたに…その人の記憶を思い出させることが…ですか?」
679「はい」
デンデ「…」
デンデ「…ぼくは、機械工学者じゃありません。完璧に思い出させることは、たぶんできません」
679「…」
デンデ「でも」
あのときのぼくは、謝ることしかできなかった
不可能だ、と突き放すことしかできなかった
無力だと自分を責めることしかできなかった
でも、今は
デンデ「あなたが、あなたの愛した人と、新たな記憶を作ることに協力することはできます」
679「…神様は、私が愛した人をしっているのですか!?」
679さんが、正面からぼくの肩を掴み、驚いた声をあげる
デンデ「…当たり前じゃないですか」
デンデ「あなたが愛してくれたのは…」
ぼくの目から涙があふれる
理由は、わかりません
デンデ「あなたが…愛してくれたのは…」
デンデ「この、デンデです」
679「…!」
299 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします[sage]:2008/06/28(土) 04:51:56.88 ID:WJnuF6DO
デンデ「…デンデで良いなら、何度でも」
デンデ「愛しています、679さん」
ぼくの口をついて出たのは、あの雨の日に、679さんが、メモリーに焼き付けると言った言葉
今はあの日のように笑いながらは言えません
しかし
その言葉を言い終わるのが早いか、遅いか
きつく、身体を抱きしめられました
深く、きつく
679「…」
デンデ「…」
679「懐かしい、言葉です」
679「メモリーにはないのに、懐古の思いが溢れ出てくる」
デンデ「679さん…」
679「神様の、全てが、懐かしく愛しい」
デンデ「…ぼくは、あなたが愛しいですよ」
679「神様、もしそれが事実なら…」
679「…私がまたあなたを愛することを、許可していただけますか?」
この人はなんて今更な質問をするでしょうか
涙が止まらないのに、可笑しくて仕方がない
デンデ「はい、デンデ良いなら、何度でも」
おしまい
・・・その後:
神とロボと記憶というもの