230 ◆hAmnyPalgs [sage] Date:2008/07/03(木) 02:44:39.13 ID:H2pHPPoo Be:
〜〜仕切りなおし・放課後の勉強会IN図書室〜〜
>>1「なあなあピッコロさーん」
ピッコロ「しー。図書室だぞ、静かにしろ」
>>1「ピッコロさんってさ、キスしたことあんの?」
ピッコロ「な、何を言ってやがるー!!」
>>1「ピッコロさん、しー」
232 ◆hAmnyPalgs [sage] Date:2008/07/03(木) 02:47:15.31 ID:H2pHPPoo Be:
「お前は、あるのか?」
ナメック星人はつがいを必要としない。
よって、そんなことに興味もないと言える。
だが、なぜかその時のオレはそんなことを問い返してしまった。
図書室の窓の向こうに、すこしずつオレンジになっていく空が見える。
それを背負った>>1が、オレの隣で、にー、と笑った。
「当たり前じゃん。もう17だっつの」
…………どうしてだか、
胸が痛んだ。
233 ◆hAmnyPalgs [sage] Date:2008/07/03(木) 02:50:53.67 ID:H2pHPPoo Be:
「そう、か」
ナメック星人に人間の美醜は良く解らない。
だが、>>1は随分と、人間の女子にしては奇抜な様子をしているように見受けられる。
だから、という訳ではないが。
>>1が毎日のようにオレに纏わりついてくるから、
だから、という訳ではないが。
>>1が、人間の男子と、そういうことをしているなんて、
考えたこともなかった。
思いつきもしなかった。
だが、勿論、>>1とオレが一緒に行動するようになったのは2年に上がってからだし
それに、24時間一緒に居るわけではない。
オレは>>1が、どんな風に暮らしているのか、
目に見える範囲でしか解らない。
ちらり、と>>1を見る。
もうそいつは今の話題を忘れたかのように、
眉があっただろう辺りの皮膚をぐにぐにと寄せながら
ノートにペンを押し付けて悩んでいた。
「どこが解らないんだ」
234 ◆hAmnyPalgs [sage] Date:2008/07/03(木) 02:53:50.61 ID:H2pHPPoo Be:
「あ、あのさー、ここ」
ぱっと嬉しそうに顔を崩しながらオレの方にノートを押し遣ってくる>>1の、
ノートではなく
唇を、見詰めてしまった。
ひらりと薄い、唇。
他の女子のように手入れもしていない、
体内に流れる赤い血の色を良く透かせたそれ。
>>1の、そこに、他の人間の唇が重なる様を想像した。
「……」
「どしたん?ピッコロさん」
不快だった。
自分の感情が、理解できない。
236 ◆hAmnyPalgs [sage] Date:2008/07/03(木) 02:56:11.95 ID:H2pHPPoo Be:
……だが勿論、そんなこと、このオレが口に出来るわけがない。
オレはナメック星人だ。
人間のように交配もしない、なにより、>>1はただの友人だ。
オレがもし人間だったとしても、
ただの友人のキスの経験なんぞで不快になったなんて
言うべきことではないだろう。
「なんでもない」
>>1のぐりぐりと良く動く目が、
にいーー、と、細くなった。
赤い唇が釣りあがる。
びくり、と背筋が震える。
「気になる?」
「何がだ」
見透かされた。見透かされている。
恥ずかしさと気まずさで、つい視線を逸らしてしまう。
239 ◆hAmnyPalgs [sage] Date:2008/07/03(木) 03:00:12.01 ID:H2pHPPoo Be:
一度視線を逸らしてしまうと、もう>>1を見ることが出来なくなってしまった。
不自然にそっぽを向いたオレを、どんな目で>>1は見ているのだろう?
そう思うとうなじに汗が滲んだ。
「ね、ピッコロさん」
オレの思考の中で、>>1の、何も塗らないのに無駄に赤い唇が、
薄い、ひらべったいそれが、三日月形に笑っている。
それに脳裏を支配されてしまって、呼びかけられた声を認識するのが遅れた。
「あ、ああ」
「俺が、ちゅーしたことあるっていうのが、気になるん?」
「ならない」
ウソだ。ウソだ。
気に、なる、誰とだ?どうしてだ?なぜだ?
ウソだ、ウソだ、気になるわけがない。気になるわけがない、
オレはそんなことには関係のない種族だ、
人間が、どんな風に交配しようが、オレには何の関係もないはずだ!
241 ◆hAmnyPalgs [sage] Date:2008/07/03(木) 03:05:30.53 ID:H2pHPPoo Be:
「!!」
ぎゅ、と握った形で机の上に置いていたオレの手に、
何か、暖かくて、少し湿ったものが被さってきた。
>>1の手だ、とすぐに気づく。
いつもオレに触れて来たがる、手だ。
この手で、>>1に口付けた男を、抱き締めたりしたのだろうか?
いや、そんなこと、関係ないじゃないか。
>>1は人間だ、人間はそういうことを楽しむ生き物だ。
そしてオレは、ただの>>1の友人だ、そんなことを気にしなくても……
「ピッコロさん、こっち向いてよ」
>>1の、人間の女子にしては少しざらついた声が、
なぜかしっとりと濡れて聞こえる。
どうして、オレは、こんなに緊張しているんだ?
245 ◆hAmnyPalgs [sage] Date:2008/07/03(木) 03:09:51.87 ID:H2pHPPoo Be:
「ピッコロ、さぁん。」
少し甘えたような口調。
これは、なんだ?>>1はこんな喋り方をするやつじゃない。
こういう声で、人間の男子と、口付けをしたということなのか。
どうしてだか、ひどく不愉快だった。
オレの手に重なった>>1の指が、
するするとオレの指と指の間を撫でまわし、辿って、
いつの間にか力の抜けてしまった俺の指の間に指を通して握ってくる。
「こっち、向いて?」
甘ったるい声、口調、
へどが出そうだ。
お前は、そんなヤツじゃないだろう!
246 ◆hAmnyPalgs [sage] Date:2008/07/03(木) 03:10:55.56 ID:H2pHPPoo Be:
どうして、そんな風に触れる。
どうして、そんな声でオレを呼ぶ?
オレをどうしたいんだ、オレにどうして欲しいんだ。
オレは人間の男子じゃない、
お前に口付けなんて、しない、
オレは友人だ、ただの。
お前に口付けなんて、出来やしない!
248 ◆hAmnyPalgs [sage] Date:2008/07/03(木) 03:13:45.12 ID:H2pHPPoo Be:
きゅぅーー、と、>>1の指がオレの手を締め付ける。
胸まで締め付けられてしまったようだ。
どうして、どうしてだ、
オレはこんな気持ち知らない。
こんな気持ちいらない、
こんな気持ちになってはいけないんだ。
「ピッコロさん」
>>1の、左手がオレのあごを捕まえた。
252 ◆hAmnyPalgs [sage] Date:2008/07/03(木) 03:17:05.98 ID:H2pHPPoo Be:
>>1の力なんて、たいしたこと、ない。
それなのにオレはいつだって>>1の力には逆らえない。
あごを掴んだ手に、促されるまま>>1を見る。
>>1の向こうの夕焼けは、随分と色濃くなっていた。
>>1の表情は少し逆光で霞んで、いつもより大人っぽく見える。
だから、なんだ、
オレは、>>1の友人だ。
男じゃ、ない、だから女になんて、興味はない。
ただ>>1の友人でいられたら、それで……。
「キス、してみよっか」
びくん。
からだが、はねた。
254 ◆hAmnyPalgs [sage] Date:2008/07/03(木) 03:21:39.63 ID:H2pHPPoo Be:
「いけない」
反射的に言葉が出た。
それはいけないことだ。
友人、は、そんなことはしない、それくらい知ってる。
>>1の指が、
……まるで男子のように振舞っていても、
やはり、男子のそれより細くて、尖った指が、
オレの顎をゆったりと撫でている。
そればかりが気になった。
「『いけない』?」
「いけないことだ……」
>>1の指に気を取られて、返答は幾分ぼやけた声になる。
ははっ、と、>>1が楽しそうに笑った。
その表情はいつもの、女らしくない、あっけらかんとした
オレの知っている>>1で、
いつのまにか体中を硬くしていたオレは、ほっと息を付いた。
「『いけない』んだ。『いや』じゃねーんだ?」
笑いの形に広がっていた唇がゆっくりと収まって、
オレが見慣れていない、笑みになる。
259 ◆hAmnyPalgs [sage] Date:2008/07/03(木) 03:29:32.41 ID:H2pHPPoo Be:
「…………>>1、いけない」
あごを、つるつると>>1の指がなぞる。
>>1の、人差し指の側面が、す、す、とオレのあごの下を擽る。
そうしながらすこしずつ、すこしずつ、
>>1へと顔を近づけられて、
拒めるはずなのに、オレの顔は誘われるままに近づいていってしまう。
「いやだ、って言ったら、止めてあげんぜ」
楽しそうな声だった。
>>1にとって、こんなことは、ただの悪ふざけなんだろう、
オレがどんなに、どんなに、
どんなに……
「目、閉じて」
閉じては、いけない。
そう思っているのに、
>>1の笑った赤い唇が、オレのまぶたの向こうに隠れた。
265 ◆hAmnyPalgs [sage] Date:2008/07/03(木) 03:38:11.83 ID:H2pHPPoo Be:
目を閉じたオレの瞼に、夕焼けの緋色と、
それよりずっと赤い>>1の唇が焼きついている。
顎に触れていた>>1の手が、指先を滑らせるように移動して頬を包んだ。
しっとりと、暖かい。
気配が近づいて来る。少しずつ。
ああ、今なら拒める、
今なら逃げられる、
今ならまだ、何もなかったことに、
ふっ、
と、オレの唇に生温い吐息が吹きかけられた。
267 ◆hAmnyPalgs [sage] Date:2008/07/03(木) 03:39:55.98 ID:H2pHPPoo Be:
>>1「あははははっ!」
ピッコロ「……――ッ?!」
>>1「息かけただけでそんなにびっくーーん!ってなんなくたっていーじゃんwwwwww」
ピッコロ「い、 いち、」
>>1「やだなーwwwwwwオトモダチにそんなこと、しちゃいけないに決まってんじゃんwwww」
>>1「しちゃ…いけ、ない」
ピッコロ「な、 お前、……ッ」
>>1「あれあれーwwwwwwwwwwピッコロさんもしかしてまんざらでもなかった?」
ピッコロ「ば……ッ、バカ……ッ!!!!!!!!!!」
268 ◆hAmnyPalgs [sage] Date:2008/07/03(木) 03:41:11.84 ID:H2pHPPoo Be:
かあーっ、と、頭のてっぺんにまで血が昇る。
こいつは、こいつはただオレをからかって、バカにしただけだ!
そう、だ、当たり前だ、オレたちはただの友人で……、
そんなことをしては、『いけない。』
当たり前だ、解っている、解っていた、
それなのにオレは…オレは、
嫌じゃなかった?
受け入れるつもりだった?
期待、していた?
270 ◆hAmnyPalgs [sage] Date:2008/07/03(木) 03:44:40.10 ID:H2pHPPoo Be:
目の前でけらけらと楽しそうに笑っている>>1に無性に腹が立った。
オレがどんな思いをしたかなんて、
こいつは、きっと、一生解らない!!
がたん、とオレは立ち上がった。
先ほどまでの、どこか薄暗いような気配をすっかり失せさせた>>1が、
きょとーん、とした顔でオレを見上げる。
ギロリ、と睨みつけてやった。
それからがちゃがちゃと不要なほどに音を立てて、自分の筆記具やノートを仕舞う。
「え?ピッコロさん?」
「オレは、帰るッ!」
乱雑に、それでもそれなりに整頓して、カバンに道具を詰め込んだ。
カバンを胸に抱きかかえるようにして、人気のない図書室を突っ切る。
信じられない、許せない、もう>>1なんかに気を許したりするものか!!
271 ◆hAmnyPalgs [sage] Date:2008/07/03(木) 03:46:40.87 ID:H2pHPPoo Be:
図書室を出て、早歩きで廊下を進む。
きらいだ、きらいだ、>>1なんざ、もう知るか!
どうして、
どうしてオレは、
今もあいつのあの、三日月形の赤い唇を、思い浮かべちまうんだ?
あれは、どんな感触がするんだ?
誰が、それを知っているんだ?
275 ◆hAmnyPalgs [sage] Date:2008/07/03(木) 03:51:33.95 ID:H2pHPPoo Be:
「ピッコロさん、待って!待ってくれよ〜」
廊下をばたばたと喧しく走ってくる足音。
>>1の声。もうすっかりいつも通りの、ざらついた。
「そんな怒んなくてもいーだろ?なーなーなー」
どんっ、と後ろから軽い体当たりを食らう。
一歩よろめいたオレの腕を、後ろから掬い取るように>>1が取った。
するりと絡み付いてくる腕。
オレに比べれば、いや、
人間の男子に比べても、細い腕。
「な、もう、しねーから。怒んねーでよwwwwwwwwwwww」
もう、しない。
その言葉に、くうん、と無念さが浮かびかけて、オレは慌ててその感情にふたをした。
いけない。もう、このふたは絶対に開けてはいけない。
「……うるさい、離せ」
277 ◆hAmnyPalgs [sage] Date:2008/07/03(木) 03:55:00.27 ID:H2pHPPoo Be:
「またまたーwwwwwwwwwwww」
「離せ!」
「ピッコロさん、ほんとに嫌ならはや歩きなんかでいかないっしょ」
「!」
「カッ飛んでっちゃうっしょ。」
じんっ、と再び顔が熱くなる。
見透かされている、
オレが本当はこうしてお前に捕まりたがっていることを。
お前はどこまでオレを、解っているんだ?
今慌ててふたをした、そうして目を背けた、
この感情にはどうか気付かないで欲しい。
「ピッコロさん、なー、」
甘えるように肩に、くりくりとした>>1の頭がこすり付けられる。
そうして、上目遣いでオレを見た>>1は、
すっかりいつもの調子で品のない笑いを浮かべた。
「ピッコロさんはさ、オレの、一番のダチだぜ」
嬉しいはずだ。
オレにとっても、>>1は一番の……。
279 ◆hAmnyPalgs [sage] Date:2008/07/03(木) 03:57:48.84 ID:H2pHPPoo Be:
ともだち、友人、 そうだ、オレと>>1はただの…
だが、押さえ込んだつもりの感情が、
がたがたと暴れて自己主張をする。
いけない。これは、いけない感情だ。
オレが抱いてはいけない、気付いてはいけない、
ずうっと、ずうっと気付かぬふりをしなくてはいけない。
そうしなければ、>>1と、友人でいられなくなる。
「な?ピッコロさんもそう思っててくれるよな?」
屈託のない笑い方。何の裏表もないような。
それに、ウソをつくのが、ひどく心苦しかった。
「ああ」
……この言葉を、ウソじゃなくしなければいけない。
オレの、全身全霊を掛けて。
「お前は……オレの、一番の……友人だ。」
>>1は、笑った。
いつも通りの笑い方だ。
それなのに、なぜだろうか。
夕焼けに染まったその表情は、泣いているように見えた。
おしまい!