調律師と庭師ひとこま

633 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sagesaga] 2009/08/28(金) 01:35:53.63 ID:Qdhhewco Be:
〜〜調律師と庭師ひとこま〜〜

調律師が窓から眺める先には、炎天下の下せわしく働く庭師の姿。
帽子の下から汗が滴り、顎へと流れていく。
暑いのだろうな、と考えながら、調律師は窓から離れるとピアノの前に座った。
庭師が喜びそうな曲を探すのが、調律師のくせになりつつある。

庭師「きれえな、曲でがすね」

聞こえてきた声に、指は止めぬまま視線を窓にやると、
汗を泥のついた手でぬぐったせいだろう、土塗れの汚い顔で庭師が笑っていた。

調律師「終わったのか」
庭師「へえ。3、4日後に、肥料の調子を見にまた寄らせてもらうでがす」
調律師「ああ。…入れ、冷たいものでも用意してやろう」
庭師「…すまんでがす…その」
調律師「良いから」

調律師は、ほんの少しだけ、庭師に対して不満があった。

635 以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sagesaga] 2009/08/28(金) 01:40:01.93 ID:Qdhhewco Be:
庭師「すまんでがす…お邪魔するでがす」

へこへこと頭を下げながら、庭師が玄関に回り、それから調律師の待つ居間へとやってくる。
己が触れた箇所が汚れるのを忌避するように身を縮めて。
汚れなど、どうでも良いのだ。
表面の汚れなぞ、洗えば落ちる。
調律師は小さく吐息を漏らし、立ち上がると音もなく台所に向かった。
所在なさげに立ち尽くす庭師に肩越しに視線をやり、座るよう指示しつつ。

調律師「麦茶でよかったな」
庭師「へえ」
調律師「ほら。……お前のおかげでうちの庭は心和むたたずまいだ。オレは感謝しているのだぞ」
庭師「きょ…恐縮でがす」

調律師は肩を小さく竦めながら麦茶のグラスに手を伸ばす庭師を見て、またひとつ息を漏らす。

調律師「…もう少し、…ずうずうしくなっても良いのだぞ」
庭師「へ、へえ?」
調律師「なんでもない」

調律師は、ほんの少しだけ、庭師に対して不満があった。
己が庭師に慣れた分だけ、庭師にも己に慣れて欲しかったのだ。



                                    つづく!
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