フリーザ様の秘密

544 ◆AC57OO8nhs [sage] Date:2009/04/18(土) 19:30:50.53 ID:HIGLYQDO Be:

「じゃあ今日はここまで、みなさんまた明日」

終業の鐘が鳴って
皆、思い思いに動き出す。
早々に鞄をひっかけ帰路を急ぐ人、友人の元に駆け寄り話し込む人、皆様々

わたしはと言うと

「ふりーざさーん」

「おや、お肉」

「ふへへー、一緒に帰ろうー」

「ふふん、仕方ないですねぇ。よろしくてですよ」

546 ◆AC57OO8nhs [sage] Date:2009/04/18(土) 20:00:42.58 ID:HIGLYQDO Be:
薄暗くなりゆく東の空が、日々冬の終わりを告げているようで
なんだか寂しげだ

「…、でね、そしたら706ってばクウラ先生に叩き飛ばされちゃってねー」

「ふふふ、お姉さまらしい」

いつも通りの帰り道
何気ない雑談
その何気ない会話が、わたしには心地よかった
今まで、取り巻きや親衛隊達では感じたことのない心地よさがお肉にはあって

「そういえばー、フリーザさんクウラ先生の他に兄弟とかいないのー?」

「お姉さまだけですよ?」

「ふーん?」

ふと、そんな心地よさにヒビのようにはいる
何か疑るような些細な視線

気のせい?

…いや、戦闘力53万のわたしに気のせいなど

「フリーザさんさ、俺にもう嘘つかないって約束したよね?」

「?、えぇ…しましたよ?」

「だよねぇ」

やはり、何かを疑われている
そう感じた。


547 ◆AC57OO8nhs [sage] Date:2009/04/18(土) 20:21:21.43 ID:HIGLYQDO Be:

「この前さー、フリーザさん家の近くで見たんだよね」

「?」

「小さいフリーザさん」

小さいわたし?
いったい何の事やら

「フリーザさんよりふた周りぐらい小さくてー、脚とか尻尾とかしましまな…」

「!」

クリーザだ
頭の中が一瞬で繋がった
繋がったけれども
それと同時にわたしを襲う、焦燥感

「…フリーザさん?」

子持ちだと、知られたら?
人間はくだらないところで拘るから
もし、子持ちだと知られたら

「おーい、フリーザさんてばー」

お肉は、引くかもしれない

「ねー、フリーザさーん」


549 ◆AC57OO8nhs [sage] Date:2009/04/18(土) 20:30:51.75 ID:HIGLYQDO Be:
「でー、妹さんかなーって思ったんだけどー、違ったかぁ」

「え、えぇ…妹などいませんよ」

まだ大丈夫
真実を言ってないだけで、うそをついてるわけじゃない
大丈夫、大丈夫


552 ◆AC57OO8nhs [sage] Date:2009/04/18(土) 21:39:23.22 ID:HIGLYQDO Be:
ただいま。耳に入った水が抜けない。

続き。


「いやー、でもねーほんとにフリーザさんの妹かと思ったんだよー」

「そうですか…」

「ちっちゃくて可愛くてねぇー、うちの小学部の子かなぁ」

「はぁ…」

我が子を誉められて、嫌な気のする親はまずいないだろうけど
なんとも後ろめたい

後ろめたくて
お肉の顔さえまともに見れずに
ただただ、灰色のアスファルトに視線を落として
クリーザと、お肉のことを考えていた

別に誰かとの交わりの末に産まれたわけではないのだから、後ろめたく思う必要はないのかもしれないが
もしも、お肉がその事実を知ったらどうなるか。どう反応を見せるか
それが、怖かった

初めて手にした居心地の良い場所が、もしも離れていってしまったらと思うと
それは今までにない『恐怖』だった


553 ◆AC57OO8nhs [sage] Date:2009/04/18(土) 21:52:23.61 ID:HIGLYQDO Be:
戦闘力53万のわたしが、まさかこんな些細なことで恐怖を感じるなど
ほんの数ヶ月前までは全く想像だにしていなかった事だった
恋は人を弱くするとはよく言ったものだ、と
内心思わずにはいられなかった。

「…はぁ」

「フリーザさんがため息なんて珍しいねー」

「…」

にこにことわたしに向けられるこの丸い笑顔も
もしもクリーザのことを知ったら掻き消えてしまうのでしょうか

しかし

わたしは、わたしは親として
クリーザも愛している

どうしたら、いいのだろう
クリーザは今年学園に入学した
このまま黙っていても、バレるのは時間の問題で
隠し通すなどまず無理な話だとはわかる。

ならば、傷は浅い方が良い


556 ◆AC57OO8nhs [sage] Date:2009/04/18(土) 22:14:50.76 ID:HIGLYQDO Be:
そして傷は、関係が浅いほど浅く済むだろうから


「お肉、実はわたし…」
「うん?」

「ままー」

「!」

事実を伝えようとしたその瞬間だった

道の先、遙か遠くから駆けてくる姿は
間違いなく、クリーザ

人間であるお肉にはまだ肉眼での確認は不可能な距離
だが、さすがはクリーザわたしの子
早い早い

あっと言う間に隣まで寄ってきて
スカートの端を掴み、くるりとわたしの後ろに回った


557 ◆AC57OO8nhs [sage] Date:2009/04/18(土) 22:20:16.88 ID:HIGLYQDO Be:
「…」

「…フリーザさん?」

「…、こちらはクリーザ。わたしの…子です」

一瞬、確かにお肉の目には驚きがあった


560 ◆AC57OO8nhs [sage] Date:2009/04/18(土) 22:37:31.45 ID:HIGLYQDO Be:

フリーザ「引くなり嫌うなりしたらよろしいですよ」
お肉「なんでー?」
フリーザ「なんでって…あなた、わたしは子持ちだったんですよ!?」
お肉「うん、それは今聞いた」
フリーザ「だったら…」
お肉「うーん、フリーザさんが産んだの?」
フリーザ「…えぇ、わたしが卵で産んで、孵したわたしの子です」
お肉「単性生殖?」
フリーザ「あ、あたりまえでしょう!」

お肉「じゃあいいんじゃない?」
フリーザ「…」


561 ◆AC57OO8nhs [sage] Date:2009/04/18(土) 22:57:12.60 ID:HIGLYQDO Be:

そう言って、わたしに向けられた笑顔は
ほんの数分前となにも変わらない、丸い笑顔で

「…」

「クリーザちゃんかーフリーザさん似だねー。単性だから当たり前だけど」

気がつけばそんなことを言いながら、お肉はクリーザを撫でて笑っていた。
にこにこ、優しい笑顔で

「どうして…」

「えー、だって俺はフリーザさんのこと好きなんだよ?」
「大好きなフリーザさんにフリーザさんそっくりな子供がいたら、ふつーに嬉しいよねぇ」

「…お肉、あなたって人は…」

嬉しくて、喜ばしくて
自分が恥ずかしくなる

お肉を、自分が好きになった相手を信じることさえできなかった自分が
ひしひしと、恥ずかしくって
まともにお肉の顔さえ見られなかった

「どうしたのフリーザさん?」

「…別に」

「テラエリカ様wwwwwwww」
「送ってくよー、フリーザさんもクリーザちゃんも一緒に」

「ふん、まぁよろしいでしょう」

落ち行く西の太陽の日差しの中
どこまでも延びるような長い影が三つ

仲良く手を繋いで


おしまい

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